青蓮 仲合、同盟会話
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仲合物語
寒天の玉露
青蓮は川辺の岩にもたれ、盃の酒を飲み干す。
「チン――」という盃の音が、静かな夜に鳴り響いた。
青蓮:無剣、どうした? 酒でも飲みたいのか?
彼は盃を揺らし、目を少し細め、額の前髪を横にからげた。
無剣:いえ……ただ眠れなくて、少し歩きに来たのです。
青蓮:ふふ、この乾いた秋風と深い夜霧だ。体が冷えないうちに、早く帰って休んだ方が良い。
私は服の裾を正したが、戻ろうとは全く思わなかった。
青蓮は私を見つめ、何かを思いついたように、少し口を開いた。
青蓮:そんな薄着でこのようなところに立っていては風邪を引くぞ。
一杯飲んで体を温めたらどうだ?
無剣:飲む、というと……お酒?
青蓮:はは、もちろんだ!
この青蓮と一緒にいて、まさか茶でも啜ろうというのか?
私が躊躇している様子を見て、青蓮は袖を振って、無理矢理私を引っ張っていった。
青蓮:私の酒の知識を甘く見るなよ。
天下の美酒、ほぼ飲み尽くしたといえよう!
無剣:ええ? お酒にもそんなに種類があるのですか?
私が飲んだことあるのは一つか二つ……
得意満面である青蓮だったが、突然顔に残念そうな表情が浮かべ、私に向けて頭を振った。
青蓮:天が酒を愛さないなら、天に酒星はない。
地が酒を愛さないなら、地に酒泉はない。
天地が酒を愛するなら、人が酒を愛するのは極自然なこと。
青蓮:酒の味を知らないのであれば、酒に酔う楽しさも理解できないだろう!
無剣:お酒って材料が違うだけで、味はほとんど同じものだと思っていました。
青蓮:大間違いだ! この中原の酒だけでも数えきれないほどあるのだぞ。
例えば桑落酒、信豊酒、菊酒、茱萸酒、竹葉酒、青尾酒、赤泥印酒……
盃に溢れんばかりに注いだ酒を、青蓮は数口で呑み干した。
無剣:この西域の美酒は、また格別だな!
中原の酒は大抵酒薬で醸すが、西域では葡萄を使って醸造する。
青蓮:まるでそう、砕葉での日々を思い出すようだ!
無剣:では一番の好みは?
青蓮:ぐぅ……それは……
青蓮は眉をひそめて考え始め、なかなか口を開かない。
青蓮:この白醪こそこの世の絶品だ……
冬に仕込み春に飲む「金陵春」なら、更なる味わいをもたらすだろう!
青蓮:ぐぅ……だがこの南国の新豊酒も独特な風味を持っているしな、両者引き分けということか。
青蓮:あと一杯飲んでから、考えさせてくれ……
その酒が口に入った後、やっと青蓮の頭に答えが浮かんだようだ。
青蓮:魯酒は琥珀色に澄み、汶水の魚は紫錦の鱗を称える。
この魯酒もまた特別な味わい!
これもまた天下の名酒の一つといえよう、しかし、酒に桂花を入れたこの桂酒も引けを取らない!
青蓮:ああ……どれも捨て難いな!
ようやく広げた眉が再びひそめ、青蓮は傍の徳利を掴み、もう一度盃を満たそうとする。
青蓮:おや? もう空っぽだと?
彼は驚いた顔で私を見ると、また視線を盃に向けた。
青蓮:酒は何処にいったのだ……お前にも飲ませて体を温めてやりたかったのだが……
青蓮の茫然とした姿を見て、私は思わず笑ってしまった。
無剣:もう真夜中ですし、全部酒仙に吸い取られたのかもしれませんね。
青蓮の顔が赤くなり、少しポカンとした後、私と一緒に笑い始めた。
青蓮:次こそ一緒に飲もうではないか。
無剣:ええ、約束ですよ!
花の一人酒
青蓮:花間一壺の酒、独り酌みて相ひ親しむ無し。
杯を挙げて明月を邀へ、影に対して三人と成る。
彼は手にした盃を高く掲げ、一気に飲み干してしまった。
その余光で傍らにいた私に目をやる――
青蓮:無剣、お前か、なぜここにいる? ちょうどいい、一杯付き合ってくれ!
無剣:またお酒ですか? でも……もう随分呑んだのでは?
青蓮:ふん……私の酒量を侮るでない!
これはただ口をすすいでいるにすぎない。
青蓮:人生意を得(う)れば須(すべか)らく歓(かん)を尽くすべし
金尊(きんそん)をして空しく月に対せしむる莫(なか)れ!!
ほら、一杯注いでやろう。
彼は盃いっぱいに酒を注ぎ、私に渡した。
青蓮:酒を飲むのに興味がないようなら、少し何かで遊ぼうか……。
無剣:えっ? まさかまた詩ですか?
青蓮:はっははは! それはいささか簡単すぎる。
「当て」をするのはどうだ?
無剣:当て……?
青蓮:当てとはな、酒を飲む前に、一人は銭やコマ、蓮子など小さなものを手の中で握り、手を背にする。
もう一人はその有無や偶奇数、色などを当てる。
青蓮:当たった者は勝ちとなり、酒は飲まない。
外れた者は負けとなり、罰として酒を飲む。
無剣:ええと……結局はお酒を飲むんですね。
青蓮:ああ、それは欠かせない!
こんな月夜に酒を酒を飲まないなど、もったいないではないか。
青蓮の嬉しそうな顔を見ていると、断ることもできない。
彼はどこからか数枚の竹の葉を持ってきて、手の中に隠した。
青蓮:私の手の中にある物の数を当ててごらん、半か丁か??
▶半に賭ける
青蓮が笑って手のひらを見せると、そこには二つの竹の葉があった。
無剣:どうやら私が負けたようですね……いいでしょう、一杯いただきます。
私は盃を一気に飲んだ。凜とした酒の香りが喉を刺す。
青蓮:なかなか強いな! さすが無剣!
青蓮が笑って手のひらを見せると、そこには二つの竹の葉があった。
無剣:どうやら私が負けたようですね……いいでしょう、一杯いただきます。
私は盃を一気に飲んだ。凜とした酒の香りが喉を刺す。
青蓮:なかなか強いな! さすが無剣!
▶丁に賭ける
青蓮が笑って手のひらを見せると、そこには二つの竹の葉があった。
青蓮:どうやら……お前の運を甘く見ていたようだな。
彼は私の手から盃を取ると、仰向けになり、全部飲んでしまった。
青蓮:ハハ……お前から貰う酒は、また格別だな!
青蓮が笑って手のひらを見せると、そこには二つの竹の葉があった。
青蓮:どうやら……お前の運を甘く見ていたようだな。
彼は私の手から盃を取ると、仰向けになり、全部飲んでしまった。
青蓮:ハハ……お前から貰う酒は、また格別だな!
何回かの当ての後、お酒が回ってきた私は、目の前が少しぼやけてきた……。
青蓮はまだまだ飲み足りないようで、徳利を手にしながら、ふらふらしていた。
青蓮:私を捨てて行く者は、昨日の日を残してはいけません。私の心を乱す者は、今日の心配の事が多いです。
彼は顔を月に向け、盃を挙げて高らかに詠いだした。月の色は舞う袖の中に流れ、影は彼の足取りに沿って揺れる。
彼の詩句を聞いていた私は、何故か一抹の虚しさと戸惑いを感じていた。彼の日頃の軽妙さとは全く似つかない。
青蓮の心には、どんな光と影が隠れているのだろうか?
月下の剣影
青蓮は月の下で剣と踊り、冷たい剣気が彼のそばにつきまとう。
一技一式、転々転移、その自由自在な動きは彼の筆さばきを思わせる。
無剣:素晴らしい良い剣法ですね!
彼は剣を納め、私を見つめている。髪が夜風の中でそっと揺れ動く。
青蓮:ふん……また眠れないのか?
私の答えを待たず、彼は周り見渡しながら、残念そうに首を振った。
青蓮:今夜はお前に飲ませる酒がないのだ……。
この山の酒は、どうやら私が飲み干してしまったようだな。
無剣:いえ、お気になさらず、私はお酒など飲まなくてもなんともありませんから。
青蓮:はっははは! それは逆に心配だな!
でも安心してくれ、さっき工部に酒や肴を持ってきてくれと頼んだところだ。
無剣:ぐっ……どうやら簡単にはいかないようですね……
青蓮:はっははは! 無剣、お前も私のことが分かってきたようだな!
涼しい山風が私たちの間を通り抜け、竹林からは葉の落ちる音がする。なんと静かで澄んだ夜だろうか。
この長い夜を私と二人で過ごせるのは、工部を除いてお前しかいない。
私は少しぼんやりしていたが、彼の目は淡く冷たい色を浮かべていた。
青蓮:刀を抽きて水を斷てば水更に流れ,杯を挙げて愁ひを消せば愁ひ更に愁ふ。
人生世に在りて意に称はざれば、明朝髪を散じて扁舟を弄せん。
無剣:青蓮、どうかしたのですか?
青蓮:ふふ……ただ感じたことを言っただけだ。
無剣:感じたこと?
青蓮は少しだけ目を垂れ、昔の事を思い出しているようだ。
青蓮:酒がないと、こんなことを思い出してしまう……
まったく! 一日酒を飲まないなんて、耐えられないな!
無剣:でも分かっているのでしょう、酒に酔うのはただ現実から逃げているだけ……
青蓮:胡蝶の梦、酒に酔っている時が真実か、それとも酔いから目が覚めた時が真実か、お前にはわかるか?
青蓮:目が覚めている時、人は真綿に針を包み、互いに騙し合う。
酔っている時、天地は意せずとも向こうからやってきて私を誘う。
青蓮:人生は短いのに、何故要らぬものの為に歩を止める必要がある?
ただ自分らしく生きていけばよいのに。
私は静かに青蓮の話を聞いていた。彼がこれまで経験してきた起伏に満ちた人生を感じることができる。
青蓮:この世界には、綺麗な衣を着て名と利を追う人間もいれば
私のように、藁を編み外界に隠居する人間もいる。
青蓮:皆は私を狂人と笑い、私は世人の凡俗を笑う。
青蓮は目の奥の愁いを隠し、不羈な表情を取り戻した。
青蓮:無剣、あまり人前で言うことではないな。
忘れてくれていい。
私は無言で頷いたが、その思考は乱れていた。そしてしばらく考えた後、口を開いた。
無剣:もし私に五剣の境を守る責任がなければ、あなたのように旅をして、世俗を超えて生きるでしょう。
無剣:しかし世の中が乱れ、人々が魍魎に怯えている今、誰かが悪を裁いて善を広め、この天地の安寧を守る必要があります。
これは剣魔の願いであり、私の志でもあります。
青蓮は黙って私を見つめた。長く、深い眼差しだった。
青蓮:どうやら……私は酒を控えた方がいいようだな。
無剣:え? お酒と何の関係があるのですか?
青蓮は口元を緩めたが、何も言わずに背を向け、
深い夜の中に消えていった……
杯中の日月
息抜きをしようと思い外に出ると、しばらくしないうちに青蓮と出会った。
彼は一人、霧雨の中に立ちすくみ、その白い服には微かに雨筋が垂れていた。
無剣:あなた……どうしてここに?
青蓮:はは……やっと来たか。
彼は私を見上げる。水滴が額に沿って襟の上に落ちていく。
無剣:待っていたというと? まさかまた酒ですか?
青蓮:はは、どうだろうね。
彼は少し微笑んで、キラキラと輝く盃を渡してくれた。
それに手を触れた、なんと精巧で美しい盃なのか。
無剣:あれ……この盃は空のようですが?
青蓮:これは酒を飲むものではない。
不思議に思った私は盃を手のひらに置き、ゆっくり見つめていた。
玉の色が澄みきり、影が流れ、とても綺麗だった。
青蓮:この盃、お前に贈ろう。
無剣:え……? どうしたのですか突然……?
青蓮の目は落ち着いていて、その口ぶりも静か。まるで何度も練り直した言葉かのようだ。
青蓮:私は決めた。蘭渚山を離れ、任侠者として義を貫き、剣を持って五剣の境を行脚する。
無剣:それじゃ……この盃は?
青蓮:この杯が満たされた時こそ、私が帰ってくる時だ。
私は、すぐには彼の決断を理解できなかった。
無剣:なぜ急に行ってしまうのですか? 前は世間から離れて隠居するって……
青蓮:以前の私は、お前のことを知らなかった。
彼の目はキラキラと輝いて、青い瞳が私を見つめていた……
青蓮:君と出会っていなければ、絆も存在しなかった。
青蓮:絆などなければ、外界で超然とし、俗世から離れて人との交流を絶ったまま生きていけるのだ。
青蓮:だが君と出会って、全てが変わった。
彼の声は霧雨とそよ風の中に消えていき、私はまだ少しぼんやりしていて、すぐに言葉が返せなかった。
青蓮:昔から平凡な日々は好かぬ、身に重任を背負い、世間に束縛されるのであれば尚更だ。
青蓮:此度の度、私は四方を駆け巡り、己の心を鍛えるのだろう。
だがもしお前が私を必要とするなら、必ず傍で守ってやる。
私は手のひらの盃を撫で、心の中に物悲しい気持ちがわき上がった。
青蓮:無剣、今度会うときには、必ず私の手で最も清く澄んだ酒を注いであげよう。
突如雨足が止み、一瞬の明月が雲から姿を現した。星々は輝きを放ち、辺りはしんと静まり返った。
彼の目には、私の影が映っていた。
盃の中には、天の川が映っていた。
同盟会話
○○の青蓮:ははは、さあ、乾杯だ!
○○の青蓮:なぜ酒を飲むかって?そりゃ当たり前だろう……
○○の青蓮:すぐに出陣して魍魎と戦うことになるんだ。飲むなら今のうちだろう?
○○の青蓮:体が弱いといって工部をなめるなよ。
○○の青蓮:窮地で磨かれた彼の品性は本当に見事なものだ。
○○の青蓮:彼に私がこう言っていたとは言うなよ。
◯◯の青蓮:私にとって酒は酔うための道具じゃない。力の源なんだ。
◯◯の青蓮:実はこの剣術、「酒仙人」といってな、私が恍惚としていたときに編み出した技なんだ。
◯◯の青蓮:どうだい、酒の世界は奇妙だろう?
判詞
二句目 意気高くて墨で風を飲む
三句目 広大な天地もその筆の下に
四句目 流るる月日もその盃に入る
五句目 清々しい波が舟を速く走らせ
六句目 緑の藪で静かに剣の稽古をする
七句目 酒を手にして喜んで旧友を呼び
八句目 曲水に流で虚無さを語り合う
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