襄陽の戦い
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襄陽の戦い
襄陽の危機
そして、思い出が波のように押し寄せてくる……
五剣の境が崩壊する前のこと、私が剣魔の守護者として果たしていた使命、一番信頼していた人の裏切り……
そして私の名前――無剣。
襄陽城内。
夜も更けたころ、三人の燭影が半間の窓に照らされている。静かな夜の中、部屋の中の話し声が微かに聞こえる。
○○:屠龍、この戦陣は誰から学んだの?
破虜屠龍:ははっ、俺は誰からも兵法を学んだことはない。
○○:さすがは天賦の才。
破虜屠龍:へへっ……それほどでも…ははっ。
赤髪の少年は髪を掻きながら、得意げな顔をしている。
反対に、傍のもう一人の少年はその年齢に似合わない冷静さを保ったまま、ただ一点、目の前の地形の模型を凝視している。
凝雪倚天:屠龍、君は油断した。
破虜屠龍:……
屠龍の得意げな顔がやや赤みを帯びた。
こういったことを言われるのは初めてではないようだ。
屠龍は何も言わず、模型の前に膝をつき、倚天の指差しているところへ目をやった。
凝雪倚天:君は敵陣を切り裂くため、ここに3隊の精鋭を置いた。
でも君は、相手が正規軍ではないということを考えていなかったのか?彼らは個々の集まりに過ぎない。各々の力と思想によって勢力は別れているが、そこには団結も陣形もない。最初から陣形を崩しに行く必要はないんだ。
凝雪倚天:この3隊の精鋭を6隊に分け、一つ一つの勢力を各個撃破し、翼側の防衛線を固める方がいい。
破虜屠龍:……
破虜屠龍:あっははは、流石はこの屠龍の弟、お見事!
……あっははは……
凝雪倚天:屠龍、兄に失礼な言い方はやめてください。
○○:……
屠龍、倚天と知り合ってから一月以上経ったが、こんな風にお互いのことを弟と呼び合うことは何度もあった。
屠龍は性格的に仕方がないとしても、倚天までこれに付き合うとは……。
○○:じゃあ明日からは倚天の言う通り城内の防衛線を再配備するわ。
敵は多い、二人とも気を付けてね。
破虜屠龍:けど俺たちが計画通りここを死守しても、時間稼ぎにしかならねえ。敵を撃退するには援軍が必要だ。
凝雪倚天:先日のあの手紙を忘れないでください。もし彼の力を借りれるなら、強力な援軍を得られます。
破虜屠龍:ぐぅ……
破虜は眉間にしわを寄せ、苦い顔をしている。そのことを思い出したくないようだ。
破虜屠龍:あいつ……か……
破虜屠龍:今から断りの手紙を書こう……よし、そうしよう。
凝雪倚天:
凝雪倚天:城外の勢力は虎視眈々と襄陽城を狙っている。これは城内の民の安全にかかわること…冗談を言っている場合ではないよ。
破虜屠龍:わかった……
だがペルシャは遠い、あいつが来るとしても、間に合うかどうかはわからない。あいつだけに期待するわけにはいかないぞ。
破虜屠龍:だから倚天。
もし三日たっても城外の攻勢が止まらないようなら、すぐに古墓と桃花島に行って援軍を探そう。
凝雪倚天:私?
破虜屠龍:そうだ、お前の力があれば俺より速く走れる。
今の襄陽にはまとめ役が必要だ、それは俺が一人で……
凝雪倚天:屠龍。
倚天が大声で怒鳴った。屠龍は自分の言ったことの意味を考え直し、こっそり私を一目見てから黙り込んだ。
○○:二人とも襄陽城には欠かせない人材よ、どちらが何をするかで言い争う必要はないわ。
今日はもう早く寝ましょう、明日もまた戦いがある。
話しが終わった途端、敵襲を知らせる角笛が営地に轟き、三人は身構えた。
破虜倚天:まずい、敵襲だ!
○○:応戦する!
兄弟の再会
????:はっ、久しぶりだな。
○○:貴方は…
○○:何故ここにいるの?
????:お前こそ、なせここにいる。
○○:……
○○:紫薇。
紫薇:はは。
紫薇:俺の目的はお前と同じだ。
○○:私がここに来た目的を知っているの?
紫薇:当然だ、俺たち五人は皆、「彼」を探しているのではないか?
○○:紫薇、主はもう亡くなったわ。
紫薇:黙れ。
紫薇の目に突然怒りが宿った。
紫薇:もし彼が亡くなったのなら、お前はなぜ彼の遺した謎に執着している?
お前が毎日主の残した本を調べているのも、いつかまた主とこの五剣の境で会うためではないか?
○○:私はそんなことに執着していない。
○○:主の残した本を見るのも、この五剣の境が主にとってどんな存在だったのかを知りたかっただけ。
そして私がここに来た目的は、「秘籍」という力の中で、何故「彼ら」だけが特別なのかを確かめたかったからよ。
紫薇:言い訳だ。
紫薇:無剣……お前は主が戻ることを望んでいないのか?
○○:俺は……
紫薇の少し震えた声を聴いて、私の心の中も微かな痛みを感じていた。
○○:でもそれは……そんなことはあり得ない。
紫薇:…お前!
○○:この結果には納得しているの、この世界の因果と輪廻を受け入れているように。
紫薇:裏切り者め。
紫薇の言葉に、私は反論しなかった。
○○:この世界では、人々はそれぞれの人生と運命がある。
天道は主の宿命を変えることはできない、私たち五剣が人々の人生と運命を変えるべきではないように。
紫薇:フン……
紫薇:まあいい。
せっかくここまで来たんだ、誰が先に主の残した謎を解けるか勝負と行こうか。
○○:貴方の負けに決まってるわ。
紫薇:もう何か知っているのか?
○○:いいえ、でも必ず私が勝つわ。
紫薇:はははっ、では今はどちらの剣が上なのか見てみようか。
剣意の源
○○:そんなことないわ。
紫薇:主の武芸を身に着けたお前には、修練でさえも苦にならないだろう……。
……はっ、そうだ、主の力を持っているお前なら……そうであった。
私は目を閉じたまま何も答えなかった。
紫薇は話を切り上げたかと思うと、城壁の方に向かい去って行った。
兆候
蛾眉:わかった!
破虜屠龍:トラ先輩、第2隊を率いて両側から包囲を。
トラ:了解だ、俺の朗報を待っててくれ。
破虜屠龍:残りは俺に続いて正面から出陣するぞ!
凝雪倚天:城門がまだ閉まってない隙に、「秘籍」を探すよそ者が城内に入り込んだようだ。
それに今は、城外に貪婪の輩が集まってきている。僕は城内の安全を守り、屠龍たちの後方を確保しなければなりません。
凝雪倚天:○○さん、城内の騒乱を鎮めるのに力を貸してもらえませんか。
○○:分 か り ま し た 。
倚天の疑惑
数人の潜入者を撃退した倚天だったが、急にその場に倒れこみ、血を吐いた。
○○:体内の気が乱れているわ、あなた本来の力ともう一つ別の力が衝突している……もう力を使うのはやめた方がいい。
凝雪倚天:ねえ……
○○:どうしたの、私の言っていることがおかしい?
倚天凝雪:…いいえ。
凝雪倚天:あなたは何者なのですか?
○○:ただの通りすがりよ。
凝雪倚天:○○はあなたの本当の名前ですか?
○○:…ええ、そうよ。
凝雪倚天:そうですか……ならば、失礼します。
銀髪の少年は剣を抜き、切先を私の心臓に向けた。
倚天凝雪:いくつか質問があります、正直に答えてください。
凝雪倚天:一つ目にまず、城外にいる「秘籍」を狙っている輩は、あなたが呼んできたのですか?
○○:違う。
倚天は疑いの表情のまま私を注視している。剣先をさらに心臓に近づけ、話を続けた。
倚天凝雪:2つ目です。襄陽城が危機に瀕して以来ずっと、あなたは最初から僕たちを助けてくれています。この世界でそんな人は極めて稀だ、あなたの目的は一体何なのですか?
○○:はぁ……
私は軽く頭を左右に振った。
○○:兄弟がしでかしたこと、その後始末をしたいだけよ。
凝雪倚天:誰だ?
○○:あなたの知らない人よ。
倚天凝雪:僕は物心がついてからずっとこの襄陽城で暮らしている、城内に僕の知らない人はいません。
その人の名を教えてください。
○○:いえ、それはできない、聞かれても答えるつもりはないわ。
凝雪倚天:ならば、無礼をお許しください。
信頼の重さ
凝雪倚天:はぁ……はぁ……
○○:屠龍たちは城外で敵と戦っている、城内の安全はあなたが守らなければならない。
私を疑っているのなら、私は今すぐ城を出るわ。
○○:でも……いま守備に回る人手が不足しているのは確か……私が出て行っても本当に大丈夫なの?
凝雪倚天:それは…
○○:今の状況を楽観視することはできないわ、今日の戦いで皆傷を負い、明日はこちらの兵力もさらに落ちているはず…。
あなたが城を出て援軍を呼びに行くとしても、後方の安全は誰に任せるの?
倚天凝雪:信じていいのですか?
○○:あなた次第よ。
凝雪倚天:……
倚天凝雪:……それなら、一つだけ頼みがあります。
○○:どういうことです?
凝雪倚天:屠龍はまっすぐな性格だから、あなたと知り合ってから、ずっとあなたのことを信頼している。
だからできれば……彼を傷つけないでください。もし……
倚天凝雪:もしそうなったとしても、あなたがやったということを、彼に悟られないようにしてください……
お願いできますか……?
○○:……
○○:ええ、約束する。
倚天は安堵の表情を浮かべた。
凝雪倚天:戻りましょう。
私と倚天は営地に戻った。屠龍たちも戻ってきていたが、まだ戦いの後で意気が高揚しており、地に座ったり蹲ったりしながら戦局について話をしている。
凝雪倚天:屠龍、戦況はどう?
破虜屠龍:はははっ、この屠龍がいて、一夫関に当たれば万夫も開くなし!
あんなやつら俺の敵じゃない!
破虜屠龍:二人のお陰で今回は完全勝利だったな。
楊:襄陽城の危機を見過ごす訳にはいかない、俺の胸に沸き立つ熱い血は戦場を欲している!
柳葉:私はただ、楊さんの誘いに乗っただけです、大したことはしてませんよ。
柳葉:でも先の戦いで、楊さんが少し傷を負ってしまいました……
楊:ただの擦り傷だ、気にするな。先にこの少年英傑たちを診てやってくれ。
○○:私も少しですが医術を心得ています。
楊さん、もしよければ傷口を見せてくれませんか。
楊:はははっ、ならば頼む。
楊の傷口の治療が終わった後、倚天と屠龍がまた部屋に戻ってきた。
破虜屠龍:今日は勝てたが、城外の敵の数は減ってない、俺たちの猛攻に耐え切れずに一時撤退しただけだろう。
襄陽城は孤立無援、このまま兵力も何れ底を付く。
破虜屠龍:俺の見たところによると、敵はちゃんと組織だってこそいないが、いつも俺たちの攻撃に対応している。
あいつらは只者じゃないぞ。
凝雪倚天:うん、奴らの後ろにはとんでもない人物がいるのかもしれません。
破虜屠龍:○○さん。
屠龍は私を見つめている。
破虜屠龍:俺たちは決めたぜ。明日、倚天は城を出て援軍を探しに行く……
破虜屠龍:城内の安全は、お前に任せてもいいか?
○○:もちろん。
凝雪倚天:……
破虜屠龍:やったぜ!戦いが終わったら一緒に三日三晩飲み明かそう!
屠龍は両手を腰にあてて笑った。
破虜屠龍:屠龍と皆の背中は、お前に任せるよ。
秘宝根源
額の汗は土に落ち、丸い円になる。
少年は刺さるような烈日に照らされ、虚ろな目でよろめきながら歩いている。
凝雪倚天:早く…早くしないと…
屠龍たちはまだ…襄陽に……
??:……君は何故ここに?
太陽の光は大きな体に遮られた。
凝雪倚天:……先輩……
玉簫:顔色が悪いな、ひとまず一緒に島に帰ろう。
凝雪倚天:襄陽……襄陽城が……屠龍……
話の途中で倚天は倒れていた。
玉簫:…!
玉簫は倚天の脈に触れたが、すぐにその顔色が曇った。
玉簫:この子の体は……
玉簫は倚天を抱えて岸に走った。
彼らが船に乗った後、一人の男が木陰から姿を現した。
クロガネ:……
クロガネ:紫薇……木剣……お前たちは本当にこんな結果を望んでいるのか……
剣塚のとある場所。
クロガネ:俺がなんの為にここへ来たのかはわかっているはずだ。
木剣:当然だ。
クロガネ:……
木剣:(軽笑)
クロガネ:兄弟と言うのなら、なぜこんなことを許す。
木剣:安心しろ、彼らは程合いを知っている。二人の若者を無下に傷つけたりはしない。
クロガネ:襄陽城は彼らの家だ!あそこには彼らの友、親族、一緒に成長してきた仲間がいる!
木剣は深くため息をついた。
木剣:クロガネ、その信頼もわからなくはない……
だが……俺たちの家はどうだ?俺たちの親族は?
クロガネ:ねぇ……
木剣:お前も無剣と同じように、主の死をどうでもいいと思っているのか?
クロガネ:俺は……そうじゃない……
木剣:主がいた頃の事を思い出せ……
五剣が剣境の守護者として、剣境の主――剣魔についていた頃。
あれがどんなに平和で素晴らしかったか……
木剣:主が去った後、この世界には未曾有の罪悪が現れた……
私が本の謎を解き、その力で主を復活させれば、世界も再び平和になる。
その時は、あの二人の少年も…
クロガネ:そんなことはありえない!
木剣:?!
クロガネ:お前が、お前が探しているものこそ……彼らだ。
木剣:なに?
クロガネ:「秘籍」は有形でもあり無形でもある。もちらも力の源。
クロガネ:襄陽にある二つのもの、「凝雪の功」と「破虜の法」だけは違う、器の中から取り出せば、器と力が形になる。
木剣:お前は……
クロガネ:この二つの力の器こそ、倚天と屠龍だ。
木剣:!
木剣:彼らはどこにいる!
クロガネ:…木剣。俺の実力はお前らには及ばない……
だが彼らに害をなすのなら、俺はお前を倒さなければならない。
木剣:……兄弟よ、お前は誤解している。
俺は彼らに危害を加えるつもりはない、彼らの身を案じているのだ。
そうでなければこんなに焦る必要はない。
木剣:もし俺が彼らを殺したいのなら、この後襄陽城に行って捕まえればいいだけのこと。
今の襄陽城は包囲されている、彼らにもう逃げ道はない。
クロガネ:……続きを聞こう。
木剣:襄陽の危機はもはや避けられない。
今は屠龍と倚天の体内に秘められている力を引き出し、彼らの利用価値を無くすことこそ、彼らを守る上案。
木剣:そして俺も、そこから「器と力が形になる」謎を解き、主を復活させる方法を見つけ出せるかもしれん。
木剣:主が復活した暁には、新たな世界の秩序が打つたてられ、そのために犠牲となった全ては原点に帰すことができる……
木剣の声は小さくなるが、言葉の中からは強い確信が伝わってくる
クロガネは眉をしかめて、何かを考えている。
クロガネ:彼らの安全は必ず約束してくれ。
木剣:それはお前次第だ。
彼らの骨と血、心と魂を一番知っているではないか。
木剣:お前がいてくれれば、彼らは安心だ。
木剣:クロガネ、協力してくれないか?
木剣:彼らの体内にある力を引き出し、主を復活させる計画を……
生死一戦
私は城壁の上に立ち、馬の蹄が巻き上げる砂塵まみれの城下を見つめ、指先から剣気を凝縮させる。
○○:主よ……これが“五剣の境”の本当の姿なのですか……
○○:この剣境を……愛しているのですか?全ての子を愛していますか?善でも悪でも、屈強でも軟弱でも、誠実でも卑怯でも、賢くても愚かでも……皆を愛しているのですか……?
私は軽く頭を左右に振る。手に凝縮させた剣気が消えていく。
営地には次々と負傷者が飛び込まれてくる。
屠龍は地面に座り、豪快に水を飲んでいる。
彼の顔に流れる汗には血が混じっている。
屠龍は私を見るやいなや、すぐに呼びかけてきた。
破虜屠龍:○○、こっちに来てくれ。
破虜屠龍:昨晩、襄陽城の防衛線について考えたんだ。
襄陽城の防衛は固い、今の兵力でも今暫くは耐えられると思う。
破虜屠龍:今日の戦いから一つ分かったことがある、襄陽の名は既に世間に広がり「剣魔の残した力」を狙ってやってくるものはどんどん増えてくる。俺たちだけでは襄陽を守りきれない。
○○:……
○○:それで、あなたはどうするの?
“襄陽を離れる”とでも言うかと思ったが、屠龍は微笑んで遠方の空を見つめた。
破虜屠龍:命を懸けてでも最後まで戦うつもりだ。
○○:ねぇ……
破虜屠龍:だから、俺がもし…もし死んでしまったら、お前に託したいことがある。
○○:言ってみて。
屠龍は肌着から絹の布と小さな旗を取り出し、私に渡した。
破虜屠龍:これは襄陽城の防衛図と号令矢だ。
破虜屠龍:まず、俺が城から出たら、地図の印が付いているところに防衛線を配置してくれ。油断するよな。
○○:分 か り ま し た 。
破虜屠龍:それから、城内にもまだたくさんの人がいる、俺の代わりに彼らを連れて避難してくれ。
○○:分 か り ま し た 。
破虜屠龍:あと……もし俺の願いを聞いてくれなくても、この屠龍にはなんの文句もない。
○○:言ってみて。
破虜屠龍:倚天は必ず桃花島の援軍と共に帰ってくる。
そのあとは倚天のことを頼む。
○○:ええ、約束する。
破虜屠龍:よし!この屠龍……生涯に一変の悔い無し。
屠龍は馬に跨り、旗は風にたなびいている。
破虜屠龍:みんなよく聞け!
破虜屠龍:敵が目の前にまで迫っている、俺たちが一歩でも後退すれば襄陽城は陥落するだろう。
破虜屠龍:敵の兵力は俺たちの数倍だ、だが俺たちは前に進むしかない!
破虜屠龍:俺は死など恐れない……
破虜屠龍:襄陽城内の同法を守りきれなければ、それこそ本当に後悔が残るだろう。
破虜屠龍:大切なものを守るために生きる、これぞ武者の本懐!
故人の託し
凝雪倚天:もうすぐ目の前です!
伏魔:案内しろ!
越女:焦らないで、倚天の体はまだ完全に回復してないのよ。
妙手:前方に煙が見える、まずい状況かもしれません。
玉簫:……
クロガネ:みんな、ちょっと待ってくれ・
凝雪倚天:…!
玉簫:貴方は…なぜここにいる?
クロガネ:俺は倚天を探しに来た。
凝雪倚天:……僕を?
クロガネ:事は急を要する、説明は後だ。
倚天、俺と一緒に来てくれ。みんなは襄陽に到達したら、倚天を置いてから迎えに来ると屠龍に伝えてくれ。
玉簫:ちょっと待て、どこに連れて行くつもりだ?
凝雪倚天:でも……
クロガネ:安全な場所だ。
どうした、俺を信用できないか?
玉簫:何かあったらただじゃ済まさないぞ!
クロガネは一瞬沈黙し、頷いた。
クロガネ:いくぞ、倚天。
真理
私は最後に残った人たちを避難させる。その様子を、一人の男が黙って後ろから見ていた。
私は振り向き、静かに彼の顔を見た。
紫薇:ふん。
紫薇:無剣……まさかお前がこんなことをしているとはな。
○○:……
彼はわざと“無剣”の二文字を強調し、嘲笑っていた。
○○:何か用?
紫薇:別に。
この勝負は俺の勝ちだと伝えたかっただけだ。
○○:……もう主の残した“凝雪の力”と”破虜の力”の秘密が解けたのか?
紫薇:いや、まだだ。
……だが、襄陽城はもう俺の手中にある、これだけ大勢いれば、見つけ出すのも時間の問題だろう。
○○:紫薇!
紫薇:ふふ、怒ったか?
○○:こんなにたくさんの人を利用してまで、自分の目的を達成したいの?
紫薇:勘違いするな、俺は彼らを利用などしていない。ただ仕事について話しただけだ。教唆も脅迫も助力もしていない。全ては彼らが自ら選択したものだ。
紫薇:彼らは自分の欲望に動かされてここに来ているだけ、俺と関係なかろう?
○○:お前……そこまで真剣にならないで……
紫薇:主の秘密を凡人に教えるべきではない!
紫薇:無剣よ……
俺がこれを伝えるかどうかに因らず、悪意の種は既に五剣の境に芽生えている。
紫薇:今日もしこの理由で襄陽を攻めなかったとしても、明日は他の理由をつけて争いを起こすだろう。
そしてお前はそれを止められない。
紫薇:これが主の築いた五剣の境……
完璧ではないが、素晴らしい……
○○:紫薇、貴方は自分が勝ったとでも?
紫薇:そうでなければ何だというのだ?
彼らを止められるとでも?
城門が破られ、数名の侵入者が私の前を走り去ろうとする。
向き合う私と紫薇の間で、城門だけが唯一の障壁となる。
剣気無声、剣気無形。
先ほどの数名の侵入者は地に倒れた。血の華の隙間、貪婪の笑みを浮かべたまま彼らの顔からは生気が消えていった。
○○:当然だ。
驚愕と恐怖が寂れた街に渦巻く。
街の中、この状況を目撃した侵入者たちはお互いに顔を見合わせて黙っていた。彼らは私と紫薇に注目し、“宝物”を探す手も止まった。
○○:襄陽城にいたこの二ヶ月。私は主の残した秘密を解いただけではなく、忠義と信頼、責任と使命についてもよく知ったわ。
○○:他の人から助けを買う為に必要なのは、騙し合いや奪い合いではなく、誠意を込めた心であることを理解した。
私は城内の人たちに目をやった。
○○:もう無駄なことはやめましょう……主の言っていたものは、もうここにはありません。
???:おーい、目を覚まして~
???:おや……深く寝入っているようだな。
???:ようやく襄陽に辿り着いたんだ、君を背負ったまま入らせるなんて言わないでくれよ。
???:屠龍君、これがお客さんに対する態度か~?
名前が呼ばれていると分か、屠龍はゆっくり目を開けた。
聖火:動けるか?
破虜屠龍:……
聖火:はぁー、どうやら無理なようだな。
腹部の強烈な痛みで屠龍は気絶しそうだった。まどろみの中で、彼は抱きかかえられたことだけを感じることができた。
聖火:こうなったら……俺が送ってやるしかないな。
貪婪の果実
みんな:はい!
伏魔:城内と城外をしっかり探せ、必ず屠龍を探し出し、安全な場所へ連れていくんだ。
玉簫:もし一般人を見つけたら指南させるように。
みんな:承知しました!
伏魔:クソ……
越女:あ……屠龍が……
伏魔:こいつらを懲らしめてやろう!
無剣の惑
玉簫:!
伏魔:何者だ、なぜ邪魔をする!
○○:私は○○です。
玉簫:屠龍はどこにいる?
○○:彼は旧友に救出されて、安全な場所で傷の治療をしているわ、安心して。
玉簫:ようか……よかった……
伏魔:こいつは信じられるのか?
玉簫:疑う必要はない・
伏魔:フン……
○○:玉簫……
玉簫:話してください。
○○:……これが世界の真相なのですか?
玉簫:真相であり、真相ではない。
ここはこの世界の一部でしかない。
玉簫:本だけを見ていても、五剣の境の真相を知ることはできません。自らの目でこの世界を見、自らの足でこの世界を歩かねば。
????:無剣はもう……俺より先に主の秘密を解いたようだ。
??:ほぉ?
????:無剣に先手を取られたら、お前の計画も……
??:ははっ、心配せずともいい。
??:俺は既に力の在処を掌握している。
????:……本当か?!
??:俺を信じてないのか?
????:ただ感心しただけだ。
扉が少し開き隙間を覗く。倚天と屠龍が横になっている、深い眠りに入っているようだ。
????:これは……
??:しーっ……
??:彼らが今後どう変化していくのか、楽しみにしているぞ。
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