暉刃 仲合、同盟会話
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仲合物語
武者不懈
廊下の外から、何かが割れる音が響いた。
扉を開けると、暉刃が一人で廊下の突き当たりに立っていて、地面に落ちた茶碗の欠片に向かって、どうしたらいいのか分からない顔をしている。
無剣:暉刃?
暉刃:……
暉刃は振り返って私を一瞥すると、急に怒ったように大きな声を出した。
暉刃:……俺は謝らないぞ!
無剣:?
暉刃:……
割れた欠片は既に一箇所にまとめられている。暉刃は片方の手を背中に回し、歯を食いしばり、眉を寄せている。
無剣:あなたは……怪我したの?
暉刃:お前とは関係ない!!
暉刃は逃げるように去ったが、傷が悪化することを心配した私は、欠片を片付けた後、暉刃の部屋の前でその扉を叩いた。
無剣:暉刃?
暉刃:……入るな!
暉刃の声の中に何かを察し、私はすぐ扉を開けて中に入った。暉刃の傷ついた指には包帯が大雑把に巻かれていて、中から血の跡が滲んでいる。
無剣:このままだと、傷がひどくなるだけよ。
私は薬箱を開け、薬酒と新品の包帯を取り出し、暉刃の傷の手当を始めた。最初は嫌がっていたが、私が傷ついた指を強く握っていることがわかると、抵抗をやめて素直になった。
無剣:出来た。
暉刃:……
暉刃は何かを呟いたが、私は聞かなかったことにして、薬箱を片付けた。
無剣:暉刃、あなたはここが嫌いなの?
暉刃:嫌いだ……
暉刃:ここの寝床はふかふかで、空気は湿っていて、住む場所も綺麗すぎだ……
暉刃:俺は……
無剣:なに?
暉刃:ここで暮らせば、俺はきっとダメになる!
無剣:……
暉刃の答えに私は泣くことも笑うこともできず、しかたなく額に手をかざした。
無剣:もし暉刃が本当に嫌なら、剣塚を出てもいいのよ。
私は暉刃に顔を向けた。私の目から、言葉に出来ない言葉を彼に感じ取ってもらいたかった。
無剣:けど私は、あなたがここに残って、剣塚の皆と仲間になって欲しいと思っているわ。
武者の衷
微かに聞こえる声から察するに、誰かが扉の前で言い争っているようだ。扉を開けてみると、最初に目に入ったのは影刃の後ろ姿だった。
影刃:あっ……!
扉が開く音が聞こえると、影刃はすぐこちらに振り返った。
影刃:無剣……兄さんは……兄さんは、あなたに話したいことがあるんだ!
暉刃:……影刃、余計なことを言うな!
影刃:僕は武器をどこかに置いてきちゃって探しに行かないといけないから……これで失礼します!
影刃は暉刃の手を振りほどいて、すぐに廊下の奥に消えた。
無剣:……
暉刃:……
暉刃:俺は……
暉刃:昼のことは……
暉刃:あの……
暉刃の顔が赤くなったが、続く言葉がなかなか出てこない。
私は黙って彼の言葉を待っている。暉刃は深く息を吸い、勇気を出して頭を上げた。
暉刃:ありがとう……
無剣:なに?
私はすぐに彼の意図を読み取れなかったが、その隙に彼はすぐに逃げていってしまった。
私はそれについて少し考えた後、微笑んで首を振り、部屋に戻った。
私が扉を閉める瞬間、廊下の奥から誰かが顔を覗かせているのが見えた。しかしそこに目を向けると、またすぐに消えていなくなった。
武者の秘
邪魔な草木を分けて空き地に目を向けると、暉刃が刃を手に取って振りかざし、鍛錬をしている光景が見えた。
寒霜抱雪!
倒転乾坤!
暉刃:ぐう……
この二つの技を使った後、陣羽は突然膝を付き、武器を地面に突き刺して体を支え、深く息を吸った。彼の顔をつたう汗は日差しに照らされ、虹色の光を放つ。
どうやら、暉刃は長い間ここで鍛錬していたようだ。しかし気になるのはその埃まみれの体と肌に見えるアザだ。私は隠れて、彼が身を起こし、再び技を繰り出すのを黙って見ている。
無剣:ここは落ち着くべき、焦ってはダメよ。
暉刃:誰だ?
鍛錬に集中していた暉刃は、近づいてきた私の存在にようやく気づいた。彼はふてくされて私に顔を向ける。
暉刃:あなたか…
暉刃:全部見ていたのか?
暉刃:笑えばいいさ……どうせ俺は……俺はダメな奴だから。
無剣:まず私が言った通りにやってみて。あなたの役に立てるはずよ。
暉刃:……本当か?
無剣:あなたを騙したりなんかしないわ。
暉刃は黙って目を閉じ、深く息を吸った後、技を繰り出した。
暉刃:ハッ――
暉刃:……あれ?
暉刃:やった……のか?
彼は自分の手を見ているが、いまの出来事がまだ信じられないようだ。彼は自分を見て、私を見て、感極まって何も言えない。
無剣:ここで二時間ぐらい鍛えていたんじゃないの。
暉刃:二時間も見ていたのか?
無剣:流石にそこまでは見ていないわ。
暉刃は安堵したようだ。
暉刃:努力は必ず報われる。確かにここの環境はいい、けど修行を怠るわけにはいかないからな。
暉刃:俺は兄だから、もっともっと強くならなければならないんだ。そうすれば影刃を守れるし、影刃に手本を示すこともできる。
言い終わった途端、暉刃は再び武器を握り締めた。
暉刃:今の俺はまだ強いとは言えない。修行はつらい、傷つきもする、でも……弟のことを想うと……
暉刃:続けなければならないと思う。
暉刃:あなたには……分からないよ。
無剣:そうか……
無剣:あなたはそう考えているのね。
無剣:でも、今はちゃんと影刃を守っているじゃない?
暉刃:うん……でも……まだ足りない。影刃は天才だから……
暉刃:俺はずっと心配しているんだ、もし俺が努力を怠ったら、すぐに影刃に追いつかれるんじゃないかと……
暉刃:その時……俺が……弟についていけなくなったら……
無剣:そうなのね……
暉刃:あ……このことは弟には言わないでくれよ……俺は……
無剣:安心して、私たちだけの秘密にする。
無剣:秘密はちゃんと守るわよ。
武者の守
事前に計画されたかのように、大勢の魍魎の一団は真っ直ぐに剣塚に向かってきた。ほとんどは扉の外の仕掛けで撃退したが、生き残った魍魎が剣塚に攻撃を仕掛けてきた。
激戦の後、私も疲労困憊だった。全快するまでにしばらくの時間を要した。ふと目を開けると、暉刃が水を持って部屋に入ってくる姿を見た。
無剣:暉刃?
暉刃:……
暉刃が逃げてしまうのではと察し、私はすぐ身を起こした。彼は少し躊躇したが、やがて水が入っている容器を机に置いた。
暉刃:俺はもう行くから……
私は黙って暉刃が離れていく姿を見ているだけで、何も言わなかった。彼は立ち止まり、こちらに振り返った。
暉刃:俺は……本当に行くから…
私はニコニコと彼を見ているだけで、何も答えていない。
暉刃:……いいだろう。
暉刃はゆっくりゆっくりと私に近づき、嫌な顔をしながら口を開いた。
暉刃:俺は……あなたに謝る為にここに来た。
無剣:なぜ?
暉刃:俺が……あの時ああやって言ってしまったのは、間違いだった……
無剣:なに?
暉刃:あなたは……俺の気持ちが分からないなんて。
暉刃:俺は今分かった……あなたにも守りたいものがいっぱいある。
暉刃:剣塚、仲間、この世界……
暉刃:それに……あなたの守りたいものは、俺のものとはまるで比べ物にならないほど大きい。
暉刃は顔を伏せた。私は彼の頭を撫でてあげた。
無剣:いや、違う。
無剣:大切なものを守りたい気持ちは同じよ。
無剣:あなたが守りたいものも、私のと同じ大切なもの。
暉刃:なら……俺はあなたと一緒に居たい。
無剣:私と一緒に?
暉刃:あなたと一緒に剣塚を守りたい。
無剣:ほぉ?
暉刃:いいかな?
無剣:当然だ。
暉刃:だから俺は強くならなければいけないんだ、守りたいものを守れるように強くなりたい。
暉刃:弟を守り、剣塚の仲間を守り、そして、あなたを守る。
同盟会話
○○の暉刃:俺と弟の武功は代々伝わる技で、二人で修行することで頂点に達することができるんだ。
○○の暉刃:それが俺たち二人で出陣する理由でもある。
○○の暉刃:一人で戦えば勝算がなくても、二人で立ち向かえば二人の戦闘力をはるかに超えた実力を発揮することができる。
○○の暉刃:弟は才能に恵まれている。日頃の努力を怠ればすぐに超えられてしまうだろうな。
○○の暉刃:そうなれば、もう弟を守ることができない。
○○の暉刃:それは兄として失格だろう……
○○の暉刃:俺と弟が旅に出るのは己を鍛えるためだ。
○○の暉刃:けど旅路で大勢の魍魎を相手にしたその先に、もっと重要な仕事が待っているかもしれない。
○○の暉刃:それは剣塚に残り、魍魎からの攻撃を防ぐのに協力することだ。
判詞
二句目 新月のような武器で戦う
三句目 共に世界を旅して回り
四句目 いつもお互いに語り合う
五句目 兄弟の思いをずっと捨てずに
六句目 時間の過ぎてゆくのを恐れている
七句目 涼しい宵には暫く休み
八句目 風が向いたらまた一緒に飛び出そう
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