三絶 仲合、同盟会話
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仲合物語
書生の情
手紙の書き方について教わりたいことがあったので、森に三絶を探しに行った。
意外にも、森で三絶の歌い声が聞こえてきた。
三絶:今宵酒から覚めるのは何処か 楊柳の岸にて 風と月を迎え
無剣:なんと美しい!
気付くと声を出していた。
三絶:無剣だったか。こんなに私のことを思ってくれるとは。まったく光栄だ。
無剣:実は頼みがひとつあるんです。
彼によく分からないところを話すと、三絶は微笑みながら聞いてくれた。彼にとっては簡単な問題だったそうで簡単に質問に答えて れた。
それだけじゃなく、紙を一枚取り出し手本を書いて渡してくれた。
受け取ってみてみると、やはり完璧な出来であり、少し変えるだけで使えるほどだった。
無剣:どうも。
三絶は軽く手を振り、こんなのなんともないと素振りで伝えた。
三絶:心配するな。こんな事で額にしわができたら、俺は悲しむぞ。
無剣:っぐ……
どう答えていいか分からないので、黙って三絶がくれた手本をしまい、帰ろうとしたが、彼がさっき書いた物が目に入ってきた。
無剣:ねえ、何書いてるの?
三絶がかい書で何かを書くのを見るのは初めてだった。彼は常に自由奔放にくずした草書体で書いていた。
無剣:ただの詞さ……
三絶:俺は何のために書いていると思う?
無剣:そんなの分かるわけないじゃない。
無剣:あなたの知ってる通り、私は詞に詳しくないの。
三絶:だからこそ当ててみる価値があるだろう?
さっき三絶の読んでいた「今宵酒から覚めるのは何処か 楊柳の岸にて 風と月を迎え」を味わい、彼の気持ちを汲み取ろうとした。
無剣:今宵酒から覚めるのは何処か 楊柳の岸にて 風と月を迎え
考えた末、つい彼の口調でその詞を声に出して詠んでしまった。
三絶:ほう?盗み聞きしていたのか?
無剣:いえ……通りかかっただけ。
三絶:いいだろう、そういうことにしてあげよう。しかし、答えは間違いだ。
無剣:なんで?まだ何も言ってないのに。
三絶:君の詠んだ詞を聞けば分かるさ。
無剣:そうですか。じゃあ私の負けですね。帰ります。
私が怒るのを見ても三絶は気にせずに、私の前に立ちふさがった。
三絶:分からないなら、ひとつ頼ませてくれるかい?
無剣:なに?こっちは忙しいの。
三絶:君の怒った顔をまだ堪能したいが、ちょっと聞いてくれ。
無剣:じゃあ言ってみて。
三絶:君に書道を書いてほしいんだ。
無剣:私の字なんかを何に使うの?
三絶は首を横に振るだけで、淡々と口を開いた。
三絶:気軽に書いてくればいいよ。
三絶が何を考えているか分からない私は、草々と字を書き三絶に渡した。三絶は頷き、満足した様子で黙っている。
無剣:何するつもり?
彼は指を横に振るだけで何も言わなかった。しかたないので、私はその場を去った……
難解の縁
しかしいくら探しても、三絶が書いたかい書が見つらなかった。いったいどこに隠したのだろうか。
そして今日、三絶の棲家の川辺で燃え尽きた紙を見つけた。
無剣:これは?
よくよく見ると、それは唐紙を燃やした灰であった。
三絶:無剣、来たのか?なぜ声をかけない?
無剣:え?三絶?どうして……
三絶:冬に輝く太陽や、暗闇に揺らめく炎みたいな君に気づかないほど、俺は馬鹿ではないよ。
無剣:三絶、あなたは……何で自分の書いたものを燃やしたの?
三絶:じゃ、当ててみたら?
無剣:また?そんなのできるわけないじゃない。直接教えてよ。
三絶:そういうわけにはいかない……
無剣:なんでなの?……本当に分からないのよ!
三絶:まだ経歴が足りないみたいだね。
無剣:三絶、経歴だったら、五剣の境で私を超える人はいないと思うよ。
三絶:でも俺は例外さ。それに……
無剣:それに?
三絶:言わなくてもいい事だよ。
彼が悲しい表情を見て、去るかどうか分からなくなった私は、三絶と一緒に灰の掃除を始めた。
掃除が終わっても、三絶は棒のように立ったままだった。言ってはいけないことを言ってしまったのかと、立ち去ろうとしたが、三絶は突然沈黙を破った。
三絶:実は……俺が書いた字が全部、誰かを記念にしてるんだ。
無剣:書ひとつに一人?
三絶:ああ、書ひとつに一人だ。
無剣:その人たちは?
三絶:俺の最も大事な人さ……
私は彼の話に驚愕した。一番大切な人は普通一人なのではないか?なぜ何人もいるのだろう?
無剣:何でそんなにいるの?
三絶:逆に聞こう、なぜ何人いてはだめなんだ?
無剣:それは…
三絶:彼女たち三人は皆私と共に歩んでくれた。私が彼女たちに抱く感情は本物だ。
三絶の言葉は心から発していた。私はどう返せばいいか分からず、黙り込んでしまった。
心の霧
無剣:みんな一番大切な人があって、それが何人もいちゃいけないと思う。
三絶:なぜいけない?
無剣:ただ、一番大切な人は一人だけだと思うんだよ。
三絶:どうして一人なんだ?
無剣:一番大切なんだから、一人に決まってるじゃない!
三絶:だから、君はまだ若いと言ったんだ。私たちの人生には、時間と共に最も大切な人が何人も出てくるんだ。普通だろ?
彼の言葉には言い返せなかったが、やはりどこかおかしい感じがした。わたしは不服なまま帰っていった。
数日後、また山で三絶に出会った。山頂で悠然と立っていて、谷川の景色を見ながら、字を書きながら歌っていた。私を見つけると 突然に音調を変え詞を歌ってきた。
三絶:衣帯緩むも悔いは無し 貴方のためなら消えるも良し
無剣:ねぇ……
彼のその様子を見るとなぜか腹が立ってきた。
無剣:なに言ってるんですか。そんな言葉は受け取れませんよ!
三絶:はぁ……熱い心はいつも冷たさに傷ついてしまうのだな。なんともしようがない!
三絶のニヤニヤ顔を見て、なぜか怒りはさらに増してきた。しかしなにを言えばいいか分からず、背を向け立ち去るしかなかった。三絶は背後でちょっと首を振ると、また紙に何かを書き始めた。
帰った後、だんだんおかしく思ってきた。なぜ三絶は私にそんなことを言うのか?当惑する私だが直接彼に聞くわけにもいかない。一人で考える事にしたがやはり分かる事はなかった。
知らぬうちに、三絶が字を書いていたところに戻っていた。
今度三絶は書いた物を残したままだった。文字を読んでみると、彼自身に書いたもののようだった……
三絶:ここに来て十数年経ったことか、親友や社会とかけ離れた生活が続く。
三絶:使命を怠る事はできないが、孤独を解消することもできない。
無剣:……
そのような内容が紙に散り散りと書かれていた。
三絶にも悩みがあるようだが、どんな事に会ってきたのだろう。
考えていると、三絶が背後に現れた。
三絶:まさか、俺の書に君を引き寄せる魅力があったとは。好きだったら、特別に書いてあげよう。
三絶:しかし、この数枚はあげられないけどね。
無剣:待って……私にあなたの過去を話してくれない?
三絶:ん……?よし、なら今度教えてやろう。
三絶:だが、この駄作どもを処分するのが先だな。君の清らかな目にこんなものがくっつくとよくないからね。
無剣:しかし……
反応するよりも早く、三絶は手を伸ばすと作品を持って行ってしまった。次の瞬間には三絶は立ち去り、見ると私に手を振ってくれた
三絶:今度こそ、君のために一本書いてやるからな!
このように私は三絶を見送り、何もできずにいた。ただ彼の過去を明らかにしようとと心に誓っただけだった。
永遠の誓い
三絶とは常にばったり出くわしていたが、ここ数日彼自身ならず彼の作品すら見ていない。
なので今日彼をたずねる事にした。数日の不在が私を無性に心配させてくれた。
しかし彼は家にいなかった。どことなく探し続けた結果、川の上流で何かを書いている三絶の姿を見つけた。
三絶:こんなとこにいても見つかるとは、私たちは心が通じ合っているね!
無剣:本当に通じ合っているなら、なんでこの数日であった事がないの?
三絶:士別れて三日ならば、刮目して相ひ待たん。
無剣:は?なんのこと?
三絶:この顔こそ、俺が知っている無剣だな。
無剣:もう……!
気持ちを静めると、自分がなぜここにいるのかを思い出した。
無剣:体調とか大丈夫?
三絶:悪者は千年生きるって聞かない?
無剣:じゃあじゃあ、過去の話をしてよ。
三絶:そんなに知りたいのかい?
無剣:うん……本当に知りたい……
三絶は少し唸り、考え事でもしているように遠い彼方を見つめる。時の壁を破るかのように。
三絶:遠く昔、まだ神器の守護者になる以前、俺は平凡な存在だった。
三絶:そのとき俺には三人の妹がいてな……詩、詞、絵という名前だった。
無剣:詩、詞、絵?品のあるお名前ね。
三絶:そうかな?まあ確かに品のある人たちだったよ。君みたいにリアルで素直ではないけど……
無剣:けど?
三絶:みんな私にとってかけがえのない存在だった。あのときの人生で一番重要なものとも言えた。
三絶:残念な事に、彼女たちはもういない。時間が流れるにつれ、俺はいい詩を詠めなくなり、いい詞も作れなくなり、絵ですら魂を失っていった……しかし彼女たちとの記憶だけはまだ心に残っている。
無剣:だから、毎日それを書いて記念にしてるの?
三絶:確かにそうなのかもな。
無剣:でも重要なのはあなたの思いでしょ?
三絶:さあな。ただ記念に残したいだけかもしれないが。
三絶:それか、日常茶飯事なだけかもな。
無剣:だけど、何で隠したりするの?わかんない……
三絶:あっ……!
三絶:そう思いますか?
無剣:そんなの分かるわけないじゃない……
三絶:確かに君の言うように、一番大切な人は一人だけなのかもしれない。その人が現れれば、他の人は共存できないのだろう。
無剣:何と言っているの?
三絶:ははは!
三絶は笑みを浮かべ、まるで何かを考え直して荷が軽くなったように、前を向き自信満々に歩いていった……
同盟会話
○○の三絶:剣魔の依頼を受けたときから、今の困難に対面すのは予想がついていた。
○○の三絶:しかし我らにできることは剣塚の主に協力すること。代わりに成し遂げることはできない……
○○の三絶:だから、剣塚の主であろうと、気をつけるように。
○○の三絶:ふう、剣塚がこんなんになってしまっては、遊ぶ興すら醒めてしまうな。
○○の三絶:はは、冗談さ。
○○の三絶:俺が今考えていることは、どう剣塚を守るかということ。
○○の三絶:雪鹿と海棠は俺たちが作り上げた絵の霊ゆえ、剣境で姿を現すことはできない。
○○の三絶:外の世界を待ち望んでいる彼らにとって遺憾なことこの上ないだろうね。
○○の三絶:俺たちにできるのは、時間を作って彼らにこちらの出来事を話してやることくらい。
判詞
二句目 花嫁が何時我の家に来るやと
三句目 筆を揮って詞を書き
四句目 武功を持って悪者を裁く
五句目 川辺に楽しく歌いながら酒を飲み
六句目 山中で耳を澄ませて静かに聞く
七句目 絵巻の中は宝物が秘められ
八句目 何時か帰って雲を楽しめるか
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