テンコウ 仲合、同盟会話
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仲合物語
少年の心性
無剣:聖火、どうかしたの?
聖火:私の心が、あなたがここにいると教えてくれたので会いに来ました。
私の答えを待たず、テンコウは先に言い始めた。
テンコウ:このあたりは木に覆われている、お前はどうやって拙僧たちを見つけた?
聖火: ふふ、無剣はまるで夜空の満月、闇の中の光。木の葉くらいでは俺の目は誤魔化せないよ。
聖火は迷いなく答えた、以前よりも自然に。しかしテンコウの顔色は険しくなった。
テンコウ:ほう?まさかペルシャの人は千里眼の術でも心得ているのか?拙僧には出来ないのだが、是非拙僧にも教えてくれないか。
聖火:いや、俺は千里眼の術なんか出来ないよ。この世の全てのものは情を伝えることができる。俺は無剣の姿が見えなくても、無剣の存在を感じることが出来る。
テンコウ:ふん!恐らく拙僧たちがここを通る事を知った上で、わざわざここで無剣を待っていたのだろう?くだらない……
テンコウは嫌みを込めた口調で聖火に言った、まるで尻尾を掴んだかのようだ。しかし聖火は答えず、ただ微笑んで頭を横に振り、自分はそんな事はしな
いと示した。
無剣:聖火、あなたは本当に私の存在を感じたから、ここに来たの?
テンコウ:フン。こんな軽い奴がそんな能力を持っているわけがない……
無剣:聖火、どういう事か教えてくれる?
聖火:中原の人たちはよく天人合一と言う。この山と林を見ろ、無剣が来たと教えてくれているだろ?
聖火は怒りで顔を真っ赤にしているテンコウのことはちっとも見ていない。顔を上げ、空中から幹枝に止まった鳥をただ見ている。私は理解した、そうか、そういうことかと。
無剣:聖火、あなたは驚いて飛び出す鳥を見て、そこに人が来る事が分かった、そうでしょう?
聖火はうなずいて肯定した。
テンコウ:ふん!鳥を見ただけでは、誰が来るかはわからないだろ。拙僧からすれば、だだのでたらめにすぎない。
私は頭を上げ、起伏している連山を見て、さっきまで歩いてきた道の痕跡を見つけようとした。じっと山をみて何かを探している私を見て、テンコウも分かったようだ、聖火はどうやって私たちの居場所を知ったのかを……
無剣:分かった!聖火、あなたはあそこにいたのよね?
山の空き地を指差した。
聖火:まさかあなたが気づくとは! さすが無剣。
無剣:でも、私たちの所に来たのはきっと何か用事があるからでしょう?
聖火:俺?俺はただあなたに会いたかっただけだ!
テンコウ:お前と喋るのは時間の無駄だ……拙僧たちには重要な任務がある、無駄にしている時間は無い、急がないと五剣の境地も滅ぶ。お前みたいに…
テンコウは文句を言いながら、先に歩き始めた。
無剣:ごめん、彼は……
聖火:構わない、この少年、なかなか面白いね。でもあなたがいれば……必ず五剣の境は助かる。
無剣:私たちがいれば、ってどういう意味ですか?
聖火:彼はまだそこで待ってるぞ、早く行ってあげないと。
無剣:はい!ではまた会いましょう!
聖火:うん、またね!
私はため息をついて、テンコウに合流した。いずれにせよ、聖火の言う通り、私にはまだまだやることがある!
全真の昔話
無剣:少し休みましょう!
テンコウ:もう疲れた?じゃ……少し休みましょう。
私のそばに立っている時でも、テンコウは周りの環境を気にしている。何かを探しているようだ。
無剣:今度は何を見ているの?
テンコウ:拙僧?拙僧はそれぞれの鳥の種類を覚えている。
無剣:鳥の種類を覚えて何をするの?
テンコウ:鳥によって驚く反応に何か違いがあるのか、飛ぶタイミングが同じかどうかを知りたい。
無剣:凄い、でも、何で突然そんなことを?
テンコウは沈黙した……だがその悔しそうな表情から読み取ることができる。あの日、聖火が飛んだ鳥から私たちの行方を発見した事を、彼はまだ気にしているようだ。
私は彼が心配だ。一度さっきの事を忘れさせなければ。そうでなければ、恐らく彼は他に何も手がつかなくなるだろう。
無剣:この鳥たちは知ってる?それぞれの名前は全部分かる?
テンジ:いや……
テンコウ:分かるのは拙僧の教がいる山の鳥に限られる。それに、あの時は全ての名前を覚えている暇はなかった。
無剣:じゃ、普段は全真教で何をするの?
テンコウ:武功の練習と修行!
無剣:修行?あなたはどうやって修行するの?
テンコウ:修行……
テンコウ:天人合一、天人合一……
テンコウは厳しい顔で聖火の言葉を繰り返し、何かを思い出したようだ。
無剣:そんな事は考えないで、先を急ぎましょう!
空気の重さを感じた私はすぐに立ち上がってテンコウを連れて出発したいのだが、半歩でも踏み出さないうちに、テンコウに引っ張られた。そして彼の長いため息を聞いた。
テンコウ:は――……
テンコウ:修行というのは天道を悟るもの、なので天人合一と言う。けど、この言葉は……難しい……
テンコウは昔の事を語り始めた。それは遠い昔の彼と帰一との対話だった。
帰一:テンコウ、あなたの武功に対する造詣は極めて深い。しかし、それに比べ道法の境界についてはまだ至らないところがある。
テンコウ:掌教師叔、それはどういう意味ですか?
帰一:心を磨くことも必要だ。その為には一度ここを出るべきだ!長年この全真教にいて、一度も外に出たことはないのですよね?
テンコウ:掌教、拙僧を追い払いたいのですか?
帰一:そうではない。だた、いまのあなたの道に対する理解では、恐らく大任を引き受けるのは難しいでしょう。
テンコウ:道に対する理解は拙僧とあなたとでは異なる、だから……
帰一:は――……
帰一:テンコウ、純陽真人が世間で遊ぶ逸事はいくらでもある。それは何故か分かるか?
テンコウ:いいえ……分からない……
帰一:本物の天道とは重陽宮で座して悟るものではない。天地をその足で訪ね、天下の万物をその目で見て初めて、天道が理解出来る。
テンコウ:これは…
帰一:もしただ全真教に居座って修練するだけならば、例え武功の境界はどれだけ高くなったとしても、道の真義は悟れない。
テンコウ:掌教……
テンコウの返事も待たず、帰一はテンコウにここを離れるよう示した……
私は静かにテンコウの話を聞いていた。
テンコウ :だから拙僧は今回の旅でずっとこういった修行に重きをおいている。けど、この前会ったあの人は……
テンコウの声が暗くなった、自分に対してとても失望したらしい。
無剣:心配しないで聖火も異境の達人よ。彼の長所を見習って自分の短所を補う、それも良いことではないの?
テンコウ:でも、あなたは拙僧に失望していないのか?拙僧は不器用で……こんな簡単なことも気づかなかったのに、まだ自分が賢いなどと思い……
無剣:まさか?
無剣:あなたはもうとても優秀です。自分を責める必要はないでしょう?
私がこう声を掛けた後、テンコウは随分と気持ちが明るくなったようだ。私が続けて何かいうのを待たずに、彼は立ち上がった。
テンコウ:行こう!
途中、彼はいつもどおり鳥の観察をしていたが、その気持ちは確かに明るくなったようだ……
探す道
無剣:紅葉を見ながら、少し休まない?
テンコウ:うん…
テンコウは私の提案を受け入れたものの、何とも言えない面持ちだ。
無剣:どうしたの?つまらない?
テンコウ:いいえ、ただその行為になんの意味があるのか分からないだけ……
無剣:ここの紅葉は綺麗だと思わない?
テンコウ:綺麗だとは思うが、それで私たちに何の得があるのか?
無剣:身も心も楽しくなった、それでいいのではないの?
テンコウは沈黙した、彼の心が本当に休まればいいのだけど。
無剣:さあ、お菓子もあるのよ!まだ温かいよ!
テンコウは驚いた表情で私が出したお菓子を見ている。
テンコウ:いつ作った?なぜまだ温かい?!
無剣:すごいでしょう?
私は得意げにテンコウを見た。彼はなぜ私が作ったばかりのような温かいお菓子を持ってこれたのか真剣に考え込んでいるようだ。
無剣:どう?わかった?
彼はしょげた顔をして頭を横に振った。
無剣:実は……この前、旅館に泊まった時に買ったの。
テンコウ:しかし、このお菓子はまだ温かい!
無剣:ほら、これはなに?
私は木箱を出した。
テンコウ:これは?
無剣:これは赤陽木で作った箱、内功を入れれば、箱の中は一定の温度が保てるの!
テンコウ:こんなものもあるのか?
テンコウ:拙僧の見聞はまだまだ狭いんだな……
無剣:そんなことはない!
落ち込むテンコウを見て、私は頭を振り、真面目に彼に言う。
あなたは自分に対して厳しすぎるのよ。天下は広く、奇妙なものなんていくらでもある。気持ちはわかるけど、いつもそれを考え込む必要はありません。「天の道は、余りを損し、不足を補う」。いつも訝しげにしているあなたを見てると、私まで神経質になるわ。そもそも、この世の万物を全て理解出来る人なんか存在しませんよ。成り行きに任せましょう!
テンコウ:「天の道は、余りを損し、不足を補う」とはそういう意味だったのか。
無剣:え?まさか意味を間違えてる?
テンコウ:いえ、あなたの言葉は、私の十年の修行よりも深い!
無剣:本当ですか?
テンコウ:本当だ!
テンコウの顔つきが変わった。何かを理解したかのような表情だ。
無剣:成り行きに任せる、それでいいのよ。それがきっとあなたのためになる!
テンコウ:はい、あなたがいれば、私はきっと出来る!
テンコウは迷いを捨てた明るい顔で、お菓子を食べている。
道の在り処
無剣:何を見ているの?
テンコウ:なんでもない、空模様を見ているだけだ。
テンコウの答えはなんだかぼんやりしています。何か他の事を考えているようです。
無剣:空模様?
無剣:空は晴れていますが、何かあるの?
テンコウ:なに?
空模様を見ているテンコウは突然微笑んだ。よく見ると、空の向こうから黒い雲が漂って来ている。
無剣:あの雲を待っているの?
テンコウ:うん!
テンコウは微笑んで頷いた。一着の雨具を渡してくれた。
無剣:嘘でしょ?ここはまだ晴れているよ。
無剣:あの雲は東にある。今は西風が吹いている。来るわけないでしょう?
テンコウ:それはどうかな!
無剣:分かった、じゃ先に雨宿りできるところを探しましょう!
テンコウ:そうですね!行こう!
私を説得できたからでしょうか、テンコウの気分は良いらしい。彼はあっさりと私の言うことをきいてくれた。
探し始めてすぐに、風が急に東風へと変わった。あの黒い雲も風に乗ってこちらまで来た。そしてみるみるうちに大雨となった。
テンコウ:早く着て!
無剣:あなたはどうするの?
テンコウ: 拙僧は大丈夫だ、あなたは早く着て!
無剣:っぐ……
私はためらっていた、明らかにテンコウは雨具を一着しか持っていない。情理的に考えても私がもらうべきではない。けど、迷っている私をしり目に、テンコウは私に雨具を着せた。
テンコウ:行こう、あそこなら雨を避けられる!
テンコウは私の手を繋いで走り出し、急いで見つけた洞窟に入った。
テンコウ:どう?
テンコウは自分がびしょ濡れであることを全く気にせず、笑って私にこう言った。
無剣:うん、凄い、でもどうして分かったの?
テンコウ:簡単だ、天人合一!
無剣:え、天人合一?あなたもそれを?
テンコウ:いけないのか?
無剣:いいけど。でも、一体どうやれば分かるの?
テンコウ:昔、本で読んだことがある。物語の中で、東風について書いてあってね。
無剣:まさか、西風が東風に変わるタイミングが書いてあるの?
テンコウ:その通り。
無剣:そういえば私も読んだことあるような。ただ、風がどうやって変わるのかについてはよく覚えていない。
テンコウ:はは、万物を全て理解する人なんていない。拙僧にも言わせていただいていいかな?
無剣:意外と理解が早いですね!
テンコウ:これはあなたのお陰だ。
無剣:はぁぁぁー?
テンコウ:あなたがさえいなければ、いまの拙僧はこんな事でさえ悟ることができない。それに、拙僧にとっては、道よりもあなたのことの方がもっと大事なのだ、もっと……
テンコウは言い淀んでいた、私の髪から流された水を優しく拭き取ってくれた……
無剣:私も何も言わずに、このまま、目を合わせて、ずっと……
同盟会話
○○のテンコウ:拙僧、全真教のテンコウと申す。
○○のテンコウ:お願いがあるのですが……
○○のテンコウ:私と勝負してみませんか?
○○のテンコウ:掌教先輩と秋水先輩が説得しようとも、終南山に帰れる見込みは非常に薄い。
○○のテンコウ:それに、焦りを敵に利用されたのはたしかに私の責任です。
○○のテンコウ:同門を説得できたとしても、帰る面など……
○○のテンコウ:天地は仁ならず、万物を以て芻狗と為す。成人は仁ならず、百姓を以て芻狗と為す。
○○のテンコウ:私が求める道とは私の剣法。相手によって変わらぬもの。
○○のテンコウ:しかしあいつは例外だ。この手で仕留めてみせます。
判詞
二句目 冷たい月光に北斗の明かり
三句目 魂は六道を超えて天上へ上り
四句目 体は修練により仙人と化す
五句目 心は花が吹いたように美しく
六句目 剣は吹雪のような俊敏さ
七句目 道を探求して悔いはない
八句目 銀河に戻り星々となりたい
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コメント
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・天地は仁ならず、万物を以て芻狗と為す。成人は仁ならず、百姓を以て芻狗と為す。
私が求める道とは私の剣法。相手によって変わらぬもの。
しかしあいつは例外だ。この手で仕留めてみせます。0
削除すると元に戻すことは出来ません。
よろしいですか?
今後表示しない