曦月 仲合、同盟会話
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仲合物語
その質は金玉の如く
彼は転びかけの私を抱えて、手から飛び出した果物カゴをひょいと拾い上げた。
私は思わず感嘆した。
しかし彼は何も気づかないまま、ただ親切そうに微笑んだ。
曦月:一人で木に登るのは危ないですよ。次は気をつけましょう。
私はうなずいて、ちょっと恥ずかしく感じた。
無剣:うん、果物狩りでもして皆に食べさせようと思ったんだけど、うっかりして……
無剣:曦月のおかげだよ、あなたがいなかったら転んじゃうところだった。
そう言いながら、私は怖がりげに地面を見た。すると正面から笑い声が聞こえてきた。
曦月:ふふ、大したことではないです。
曦月:でも、私たちは果物を食事でとるほどの状況に陥ってはいないと思いますけれどね?
曦月の顔色は変わっていないが、私を見ている眼差しには何かが潜んでいるようだった。
まっすぐ見られて言い逃れできなくなった私は、本音を吐いた。
無剣:私……皆の役に立ちたいの。
無剣:普段魍魎との戦いで皆に世話になっているから、私にできることがあったら、皆のためにやってみたい。
曦月はそれ聞いて目の底に何かが閃いたようだったが、ほんの一瞬ことだったため、気のせいかと思った。
曦月:そうなのね……
彼は少し目を俯せてから、すぐ私へ五月の朝日のような明るい笑顔を見せた。
曦月:それでは、私も手伝いましょう。
無剣:えっ?
私がまだ反応していないうちに、曦月はあっさりと木に登った。しかも手にはさっき私が中身をほとんどばら撒いた果物カゴを持っている。
私は頭を上げると、彼はカゴを微々に揺らして私に聞いた。
曦月:この量だと、何人ぶんになりそうに見えますか?
情けないから、私は顔を合わせないようにした。そしてまた曦月の明るい笑い声が耳元に届いた。
曦月:ふふ、まあ、その気持ちだけで……十分です。
もう一度頭を上げると、曦月はすでに木々の影に消えていた。
しばらく経ってから、彼は果物がいっぱい入ったカゴを持って私の目の前に現れた。
無剣:こんなにたくさん……!本当にありがとう。
喜びながら彼から果物カゴを渡してもらった。心が温かさでいっぱいになっている。
曦月:へぇ?ならば一つ頼みたいことあります。
曦月はそう言っていた。顔色は相変わらず親切だ。
無剣:えっと、いったい……どういったことでしょう?
曦月:そうだね、思いついたら教えてあげましょう。
そして彼は何か込められた目線で私を見やり、その場から去った。
その念に情はなかった
古墓を離れた後、とある夕暮れ時に彼は私に会いにきた。
曦月:頼みたいこと……思いつきました。
曦月:ふふ、でもちっぽけなことだから、あまり大げさにしないでほしいです。
曦月は慰めるように微笑んでから、眉をひそめて近くにある森を眺めた。
曦月:あいにくなことに、先ほど森の中で散歩していたとき、うっかり玉佩をなくしてしまいました……
曦月:本当は戻って探しにいこうと思ったけど、急用が入って、あなたに頼むしかなくなったのです。
曦月はため息をついた。いつもの笑顔には憂鬱な影が僅かに被さっていた。
無剣:いいよ、曦月の役に立てるなら、そんなのなんてことないよ。
私は手を振って、曦月に玉佩が落ちた場所を聞いた後、急いで森に入った。
しかし、玉佩探しは思っていたよりも順調にいかなかった。
無剣:ここもない……ここもない……
結構探したものの、玉佩は見つからない。しかも空が暗くなってきた。
もっと奥へ探しに行こうと思ったとき、足元にぽっかりとした感覚を覚えたーー
目の前には大きな穴があり、底には刃物のような寒光が輝いていた。たぶん獣狩りの罠だ。
それに気付いた途端、私はすぐ手で体を支えて、落ちないように頑張って後ろへ倒れようとした。
無剣:危なかった……
ようやくほっとできたら、後ろから冷笑の声が聞こえてきた。
???:ふふ!残念、もう少しだったのに……運がいいですね。
不安げに振り向くとーー軽蔑な表情をした白髪の青年は目の前にいる。幻覚だと思った。
無剣:ヒ……ツキ……?
曦月:そうです、私です。
曦月:なんです?信じられないですか?それとも、私がここにいるはずがないとでも思っていますか?
曦月:教えてやりましょう、間抜け。全部嘘です。私は急用もないし、玉佩をなくしてもいません。ここに罠があることも承知の上……
曦月:あなたにしたことはすべて、あなたの信頼を得るための嘘です。
無剣:どうして……
曦月:どうして?ふん、教えるはずがないでしょう?
よく知ったつもりの金色の瞳に浮ぶ軽蔑さを見て、私の胸が張り裂けそうだ。罠を避けようとして受けた怪我も感じなくなっていた。
曦月:しかし、あなたの苦しそうな表情で結構楽しめたから、もっと絶望させてやりましょう。
曦月:ーー私はあなたのような、人情を口にする馬鹿が大嫌いです。
曦月:少し恩を受けたら、すぐその人を信頼する……本音と建前すら分かりません。考えるだけで笑ってしまいますよ。
無剣:俺は……
曦月:いちいち考えなくていいよ、興味ありませんし。
曦月:とにかく、これからは私の前から消えてください。でないと、今度こそまた"運がいい"なんて保証できませんね。
私を冷たく見やってから、曦月は服についている埃を払って、未練なく去っていった。
彼が遠く離れてから、私はゆっくり立ちあがった。全身が痛くなっている。
でも、一番痛いのは……心だろう。
花が願わなくとも
心から信頼していた彼の本当の姿は思っていたのと全く異なった。信じたくはないが、なかなかあの日の残酷なシーンは無視できなかった。
それでもなお、何度も反省してから、絶情谷の情花畑まで曦月を探しに行った。
曦月:言ったでしょう?私の前から消えろと。
曦月:もしかして……前回の教訓ではまだ懲りないですか?もう一度思い出してあげましょうか?
私は黙ったまま彼を見ていた。あの冷たい顔には前のような爽やかな表情など一切なかった。でも……たぶんそれが本当の曦月だろう。
そう考えて、私はつい拳を強く握った。
無剣:そのことをもうほじくり返さなくていいよ、私は……ただ伝えたいことがあるんだ。
曦月:ほお?まだ何を言いたいですか?
無剣:曦月が言っていたように、私は誰かに恩を受けたらすぐその人を信頼してしまう間抜けなのかも。
無剣:記憶が無くなったことに気まずいときに、私はいつもこう自分を励ますのだ、無くなった記憶よりもずっと良い思い出が出来るはずだと。
無剣:だから悪意で人を憶測はしない。自分勝手だと言っても構わない。私はただ"良い"思い出を作りたい。
曦月:フン、少しは分かりますね。
無剣:ーーでも、自分が間違っていることに気づいた。
無剣:思い出において大切なのは良し悪しはなく、それは……真実だ。
私は目を閉じて、少し止まった後、顔を上げて曦月を見た。
無剣:だから、私は曦月に謝りたい。
曦月:ねぇ……
信じられない話を聞いたかのように、初めて曦月は眉をひそめた。
無剣:自分の都合に目がくらんで、他人の善意ばかりもらおうとしていたから、早いうちに本当のあなたを知ることが出来なかった。許して……欲しい。
曦月:ふっ、冗談ではありません。もう一度やり直しても私の本心が見えると思いませんね。
無剣:そうかな?大丈夫だよ、もう一度やり直そう。
曦月:どういう意味です?
無剣:改めて知り合おうって意味。
無剣:あなたを私の思っていた曦月に思わないようにする……ただ単に二つの顔を持っていて、人の助けたりいじめたりする人として見るよ。
曦月:それだけですか……?私を憎まないですか?仕返ししたくないですか?
愕然になった彼が連投してきた質問に対して、私は首を横に振った。
無剣:簡単に人を信じて判断力を失ったのは私自身の間違いだ。それにあなたに仕返しをするよりも、やりたいことがある。
無剣:それは本当のあなたを知り、あなたが認めてくれるような仲間になること。
曦月:フン、やめておきなさい。あなたには出来るはずもありません。
曦月:見た目美しくても、醜い果実しか実らない情花のように、言葉がどれだけ甘く聞こえても、無駄なだけです。
無剣:美しいか醜いか、それは花が選択したことじゃない。
花が一生懸命咲いたからこそ、最後に「果実」が得られる。美しくても醜くても、いいことでも悪いことでも、どれもが大切な真実だよ。
曦月:フン、弁舌ですね。これで私を説得できたとでも思いますか?
無剣:思わない。だってこれもあなたを知りたいと思ってやったことだから。
曦月:本当に、あなたは本当に……救いようがないですね!
曦月は逆切れたように私に指をさして、次の瞬間にまた手を引っ込めて噴ったように背を向けた。
曦月:ならいつ後悔するか見せてもらいましょう。
曦月がそう言った時の表情は分からなかった。ただ、その突然低くなった声から、私は何かが分かったような気がした。
君が心を知ってしまった
曦月:ここで何をしています?
無剣:ボーッとしているんだ、曦月も一緒にどう?
曦月:そんなつまらない趣味はありません。
無剣:あなたのその、人の失態を見て楽しむ趣味もつまらないと思うけど。
曦月:お前……!私のことをよく知ったようなフリをするな!よく聞け、私はーー
無剣:ただ私が転ぶ姿をもう一度見たいだけでしょう?もう覚えたよ。
ーーいつの間にか曦月との付き合いは今のような状態になった。気ままな時もあれば、対立しあう時もある。
でもわざと親切なふりを装った最初の彼よりも、今の曦月の方はもっと安心感を覚えられる。
無剣:ありがとう、曦月。
いきなり軽い調子で隣の青年に礼を言った。すると、冷やかしていた彼が突然静かになった。
曦月:なんか……ヘンな物でも食べたのですか?
曦月は眉をひそめて私に近づき、疑いを抱いた顔した。
無剣:ないよ。ただこの前、もし曦月があんなに深刻な教訓をくれなかったら、今回の緑ーーいいえ、浮生の件はこんなに早く受け入れられたはずがないと思う。
私は俯いて、自嘲するようにほほえんだ。
無剣:あなたの言う通りで、この前までの私は本当に独善的で馬鹿だったみたいだ。
曦月:……あなたは記憶喪失になっただけです。
曦月:もしあなたが最初から全て知っていたとしたら、こんなことにはならなかったはずです。
無剣:そうだね、曦月と、みんなと一緒に歩いてきたことさえ無かったら……記憶を失わなくても、今より上手く出来るとは思えない。
無剣:だから、やはりあなたに感謝しないと。ありがとう、曦月。
曦月に微笑んで、彼の金色の瞳を見つめた。
無剣:あなたは自分の本心を隠したけど、私に自分の本心を知るのに手伝ってくれた。これが一番喜ばしいことだよ。
話を聞いて曦月は急いで顔を背けた。少し困っているように見える。
気のせいだろうか、見える部分の頬がいつもより赤い。
曦月:……やっぱり、私に仕返しをしたいですね。
もうそれ以上何も言わないかと思った時、曦月は突然顔を私に向けてきた。
今回は私が彼の意図を戸惑った。
無剣:え?何て言った?
曦月:もう出来ません……あなたの落ち込む姿を楽しむことが。
曦月:もっと言えば、おかしくなったようですーー苦しむあなたよりも、笑ってるあなたが見たくなりました……
無剣:曦月……
彼の名前を呼ぶ以外に何と言っていいのか分からなくなった。ただ以前のように彼を見つめるしかなかった。
曦月:あなたの勝ちです。
そのよく知った金色の瞳に、見たことのない優しさが溢れていた。瞳の主人は次の瞬間、その手で私の顔を上げさせた。
曦月:しかし、私も負けていませんよ。これからその笑顔を見るために、私はいつもの通りに手段を選びません。
無剣:そう?誠に光栄です。
その時、私は笑っていたはずなのに、涙を流した。
それで初めて知った、涙も甘い味がするのを。
同盟会話
○○の曦月:私にも絶情谷の外に何人も友がいました。酒を一緒に飲むだけでしたがね。
○○の曦月:剣境がボロボロになってしまった今、彼らは無事なのか……
○○の曦月:ふう、考えてもしょうがないですね……
○○の曦月:うん……
○○の曦月:ああ、すみません。さっきは面白い考え事をしていて気づきませんでした。
○○の曦月:何を考えていたのかって?本当に知りたいのですか?ならなおさら秘密ですね、ははは。
○○の曦月:夢妖は死を恐れぬ尖兵のようですね。命を投げ捨ててまで我らを道連れにしようとする。
○○の曦月:そしてその尖兵を指揮する指揮官が夢魘……
○○の曦月:まさか、木剣の陰謀を砕くほかに、もうひとつの大軍も防がなければいけないというのでしょうか?
判詞
二句目 枯れた泉に血を飲んできた生涯
三句目 朝にその綺麗さが雲までを晴らし
四句目 夜にその光が露よりも寒い
五句目 壊れ屋を眺めてなお寒さを感じ
六句目 いつもの嘘に稀に現れる本心
七句目 川沿いの道を慎重に歩んで探しに行こう
八句目 隠れ屋で花が見えるまで
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コメント
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・私にも絶情谷の外に何人も友がいました。酒を一緒に飲むだけでしたがね。
剣境がボロボロになってしまった今、彼らは無事なのか……
ふう、考えてもしょうがないですね……
・うん……
ああ、すみません。さっきは面白い考え事をしていて気づきませんでした。
何を考えていたのかって?本当に知りたいのですか?ならなおさら秘密ですね、ははは。
・夢妖は死を恐れぬ尖兵のようですね。命を投げ捨ててまで我らを道連れにしようとする。
そしてその尖兵を指揮する指揮官が夢魘……
まさか、木剣の陰謀を砕くほかに、もうひとつの大軍も防がなければいけないというのでしょうか?0
削除すると元に戻すことは出来ません。
よろしいですか?
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