越女 仲合、同盟会話
タグ一覧
>最終更新日時:
仲合会話
江南の水の里
越女:おう、来たか!今回は遅いじゃない。
越女が私を見て、川から軽快に飛び上がった。髪が水面を掠めて少し濡れようと全く気にせず、ただ満面の笑みで私を見ている。
無剣:お菓子屋の前を通りかかってね、新作のお菓子が綺麗だったから買ってきたんだ。ただ人が多かったから少し待っちゃって。
越女:なるほど。どんなお菓子?美味しい?
無剣:ええと……美味しいと思う。お菓子屋のお菓子はいつも美味いしね、それに今回の新作はとっても綺麗だよ。
油紙を広げると、いくつもの精巧なお菓子が現れた。彼女は目をきらきらと輝かせた。
越女:うさぎみたいにふわふわしている。赤い目もあるね。
無剣:でしょ?その頭にある二つの葉っぱはうさぎの耳に見えない?
越女:見える!可愛いね!どうしよう! こんなに可愛いと食べちゃうのがもったいないよ。
無剣:ええっ、食べないと腐っちゃうよ。
越女」 あっ……!
彼女は手にあるうさぎのお菓子を見て困ったような顔をすると、目を瞑って、お菓子を少し噛んだ。ちょうどうさぎの耳のところだ。
越女:あっ!葉っぱじゃない。
無剣:なに?
越女:緑のうさぎの耳は葉っぱじゃないよ、甘くて美味しい。食べてみて。
彼女は一つ摘んで私の目の前に持ってきた。一口噛むと、甘い味が口の中に広がった。
無剣:うん!美味しい!
越女:ふふふ……
お菓子を持って一緒に川辺に座った。江南の川辺に柳がそよそよとなびき、小舟が行ったり来たりしている。遠くの青山が絵のように とても綺麗だ。
越女はお菓子を食べながら足をゆらゆらと揺らしている。視線は遠くに留まっていた。
無剣:何を見てるの?
そう聞くと、彼女は私に顔を向けて、ふふっと笑った。
越女:あの水を見て、底が見えるほど透き通っていて、遊んでる魚も見えるよ。
越女:あの青山と白い雲と青空もほら、綺麗な景色だよね。久しぶりに見た。
無剣:江南っていつもこうじゃないの?
越女:そうだよ。でも長い間江南を離れていて、雨上がりの青草の匂いと霧のような小雨を忘れかけていたんだ。
越女:春にはね、江南は雨がずっと降るの。たくさんの雨が降って、川の水嵩が上がる。そして浅い川の河水は岸まで溢れてくるんだ。
越女:青く柔らかい草も水侵しになるんだけど、春も半分過ぎれば水はだんだん下がる。
越女:江南の冬を見たことはあるかな?暖かい時には太陽も見えるよ。そして今にも落ちそうな葉っぱはまばらだけど、変わらず緑のままなんだよ。
無剣:へえ、きっと素敵な景色なんだろうね。ここに残って見てみるよ。
越女:うん、その時は案内してあげるね!
無剣:分かった。約束だよ。
越女:ええ、是非!
船を漕ぎ、蓮を捥ぐ
彼女と小舟の上に座り、ゆっくりと竿を漕ぐ。彼女は低い声で歌謡を歌っている。歌声が軽快でとても美しい。
越女:あっ、ほら、赤い魚がいる。
彼女は突然川面を見た。ここの川は澄みきって底まで見えるため、水の中で泳ぎ回る魚たちもよく見える。
私たちは川の上で舟を漕ぎ、高く低く連なっている蓮の間を通る。蓮の花がその中で白くみずみずしく咲いていて、とても可愛らしい。
無剣:ここで休もう。
越女:そうね、ここの河水は涼しいの。とっても暑い時になると大勢の人が小舟を漕いで川まで来て涼んでいくの。
彼女は足を伸ばして水に浸かる。
越女:あなたも試してみて、気持ちいいよ。
無剣:分かりました。
越女:どうどう?
無剣:冷たくて気持ちいい。暑い時こうしてずっと川に浸かるのは最高だね。
私が足を川に入れると、魚が足元まで泳いでくるやいなや、尻尾を振って私の足先をついばんだ。
無剣:あっ!
越女:えっ?どうしたの?
無剣:ふふっーー大丈夫、あの魚が私をぱくっとしただけ。
越女:っふふ、可愛い魚だね。そうだ、蓮の実を食べる?
無剣:蓮の実?
越女:蓮狩りよ!
彼女は小舟を一輪の蓮まで漕いで、少し花を弄った。
越女:はい、これ。蓮の実は生で食べられるんだから。でも中央の部分は取ってね、苦いから。
無剣:ええと……まずは洗った方がいいと思う。
越女:ふふ、舟の下は水だから、洗って。
無剣:……
無剣:こんな暮らしも悪くないね。
私は蓮の実を洗いながら越女に言った。彼女は頭を傾けて私を見つめる。
越女:あなたもそう思うの?
無剣:うん、ずっとこのまま暮らせたら、きっといろんな悩みごとを忘れられて、毎日楽しく過ごせると思う。
越女 ふふ、わたしもそう思うわ。でも……ここは一つ良くないところがあるんだ……
無剣:なに?
越女:わたしは雪が大好きなんだけど、ここは雪が滅多に降らないんだ。江南はよく雨は降るけれど、雪は降らない。
越女:昔砂漠で大雪が降るのを見たのだけど、雪が草原を純白に埋め尽くしていくのが、本当に大好きで。お兄ちゃんたちと雪玉を作りたいと思ったけれど、子供みたいだとからかわれたんだ。
無剣:江南の雪を見たことはある?
越女:一度か二度見たことがあるけれどよく覚えてない。その雪は細くてまるで空を舞う柳絮のようだった。
越女:もう随分と見てない!
無剣:大丈夫、今年の冬は雪が降るようにって願っておいてあげる。
越女:うん!
雪に覆われた赤い梅の花
外の小道を歩きながら、手のひらに息を吐く。秋は最後の縁を連れ去っていくようで、道端にある青々とした植物は枯れ、物寂しい風景が広がっていた。
越女:今年の冬は寒いね。
越女は私のそばを歩きながら、手のひらに息を吐く。
越女:もうこんなに寒いんだから、雪が降るかな?
無剣:降るかもしれないよ。
越女:雪が降って欲しいな、江南の雪は久しぶりだ。
彼女は空を見上げると、突然冷たい雨が降ってきた。
越女:あっ、雨が降ってきた。
私たちは急いで雨宿り出来る場所を探した。雨の雫が一滴、また一滴と落ちてきて、空がだんだん暗くなっていく。その雨は少しずつ凍るように固くなっていった。
いつの間にか雨が止んだ。空は更に暗くなって、そして白い綿毛のような物が落ちてきた。
無剣:雪だ。
その小さな雪花が風に吹かれてひらひらと舞い落ちる。確かに、空を舞う柳絮に似ている。
越女:うわ!
彼女が雨宿りを止めて飛び出すと、雪が彼女の肩へ髪へと落ちていった。
越女:見て、雪って軽いね。手に落ちるとすく水になる。
無剣:そうだね。
越女:砂漠で見た雪はひと欠片が大きくて、絶え間なく地面に降りてきて、あっという間に厚く積もっていったんだ。これと全然違う。
彼女は羽のようにふわりふわりと落ちる雪を見ている。突然、笑いながら振り向いて私の方を見た。
越女:よし!行こう。この先に梅の木を植えている民家があるらしいんだ。この時期ともなれば花が咲いてるよ。
無剣:分 か り ま し た。
私たちは先へと進むと、その民家はそう遠くなかったのか、少し歩いたら着いた。空は暗くて少しの光も照らしてこない。その民家の前には灯篭があった。
灯篭の光も暗いが、門の前がちゃんと照らされていて、赤い花が咲きほこっている木も照らされていた。そして……木の下にいる何かも。
越女:あっ!あれってなんだろう?
越女はびっくりしてそこを眺めた。それはちっちゃくて、木の下でじっとしていた。汚れた毛の上に白い雪と赤い花が散っている。
無剣:あれは……
その姿が分かった時、私は足が止まった。
それはやせ細った可哀想な子猫で、既に生気はなかった。じっとしていて、体が雪のように冷たい。
越女:嘘、まさか……可哀想に……埋めてあげよう。
無剣:分 か り ま し た。
越女:あんまり元気がないように見えるけれど、どうしたの?
無剣:死ぬっていうことがどういうことか分かってる?
私は黙って立って前を見る。彼女は私が見てる物を見やり、しばらくするとこちらに向かって笑いかけた。
越女:分かってるよ。
前の木に咲いた血のように赤い梅の花が、雪に覆われている。木の下の冷たい泥水が墓を覆った。
温もりを抱く
無剣:いえ...何も。
越女:ここ最近のあなたはいつも一人ぽかんとしていて、わたしの相手をしてくれないね。
無剣:いえ...何も。
越女:何かあったの?わたしに聞かせてよ、話せば楽になるよ。ずっと自分の中にしまっていたらもっと辛くなるよ。
無剣:……
越女:一緒にお菓子屋のお菓子を食べよう?池に蓮狩りに行ってもいいよ?楽しいことをしたら気晴らしになるよ。
無剣:ごめん。
越女:え?なんで謝るの?
無剣:私……ちょっと悲しくて……あなたを無視しちゃったかもしれない。
越女:大丈夫だよ。一体どうしたの?教えてくれる?
私の肩を軽く叩いて、彼女は心配する目つきで私を見た。
無剣:この前見た子猫は覚えてる?
越女:あの子猫?覚えてるよ。でも……彼を見つけた時、彼はもう……そのことで悲しんでいるの?
無剣:あなたは知らないだろうけれど、昔猫を飼っていたんだ。
越女:剣塚の奥で?そこでは可愛い動物をよく見かけるって言ってたね。
無剣:そう。あの日は晴れで、太陽が眩しくて、そこである子猫を見つけた。
越女:どんな感じ?可愛い?この前見つけた子猫と同じかな?
無剣:ちょっと違う。あの子は三毛猫で、貧弱で人見知りで、脚の1つを引きずっていた。
越女:足を引きずっていたってことは足を怪我していたの?可哀想な子猫だね。で、その後はどうなったの?人見知りだから逃げちゃった?
無剣:ううん、餌をそこに残しておいたんだ。彼もだんだん私のこと怖がらなくなったから、彼の世話をしたんだ。
越女:よかった。あなたは優しい人だから、きっとその子にも優しくしてあげられる。彼にいっぱいご飯をあげて、わたしのようにぶくぶくにさせるんでしょうね。
無剣:ふふっ、あなたは太ってないよ。
おかしさに笑いそうになって、気分が少しよくなった。彼女は続きを聞きたそうにしていたが、私の憂き目に触れてしまうのが怖くてためらっているのに気付き、私はため息をつく。
無剣:ある日、彼が失踪した。
越女:ええっ!まさか?
無剣:その時は気にしていなかったんだ。彼はそれまでのように遊びに出ただけで、次の日には戻ると思っていた。
越女:じゃあその猫は戻ってきたの?
彼女は急ぐように問い詰める。私はまたため息をついた。
無剣:戻ってきたけれど、様子があまり良くなかった。ずっと傍らでそのことを隠していた。
越女:なんで?楽しくないことでもあったの?虐められたのかな?
無剣:分からない……そして彼はまた失踪して、見つけた時には彼はもう死んでいた。
越女:この前見かけたあの子と同じように?
無剣:そうだよ。ときどき彼の柔らかい毛に触れてみたくなるけれど、二度と触られない。知ってる?これが死だって。
話が終わると私は黙りこくった。あの時、私は彼の死体を見ることがなかった。神雕さんがあの子を見つけて、埋めてあげたんだ。
たった数日で友達と別れた。突然思い出して、悲しみが胸にこみ上げる。
彼女は私を見て慰めようとするが、慰め方が分からなかった。
越女:悲しまないでよ、ほらーー
私の肩を叩くと、いきなり私の膝にもたれかかり、真摯な目で私を見つめた。
越女:悲しまないで、わたしがいるでしょ。にゃ~~ん、ほら、こういう感じかな?にゃ~~ん
私は少しぽかんとして、突然……突然、何かが目から溢れだした。
私はぎゅうっと彼女を抱き締めた。
まるで冷め切った心が、やっと一つの暖かさに溢れた魂を抱きしめることが出来たかのように。
同盟会話
◯◯の越女:え、服が破れちゃいましたか?
◯◯の越女:待っててください。針と糸を持ってきます。
◯◯の越女:待っている間、お酒を取りに行ってくれませんか?わたし、お酒が大好きで。
◯◯の越女:わたしは江南出身で、
◯◯の越女:伏魔、妙手とは義兄弟です。
◯◯の越女:でも、わたしたちは江南から旅立ってから、ほとんど帰省していません……
◯◯の越女:は――……
◯◯の越女:わたしは不器用です。強力な剣術を習ったのに、どうにも使いこなせません。
◯◯の越女:これからも兄たちと一緒に江湖を遊歴したいから、どうにか精進しないと。
判詞
二句目 翠のシルク袖に赤い頬
三句目 鳥が古い曲を聞いてさえずり
四句目 新しい櫛を差しつつ波に映す
五句目 月の下で酒を飲んで笑って語り合い
六句目 江南の春色を観ながら散策する
七句目 酔い際に北地の雁を思い出し
八句目 銀の砂の夢をまた見れるとは限らない
コメント(0)
コメント
削除すると元に戻すことは出来ません。
よろしいですか?
今後表示しない