毒龍 仲合、同盟会話
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仲合会話
桃の夭夭たる
あの日、家の前の桃の花びらが落ちてから、
私にとって、「春」はもうただの季節ではなくなった……
毒龍:はぁ、無剣、
見て、桃の花びらが舞い散っていく。
花びらが、毒龍の体に舞い落ちる。
彼は一枚の花びらをとって、少し匂いを嗅いでいる。
毒龍:また一つ、春が過ぎ去ったね。
その憂鬱そうな表情にちょっとびっくりした、彼でも、往く春を惜しむとは。
無剣:そんな、桃の花が散っても、杏とか蘭とか海棠とか。
まだ咲いてない花もいっぱいあるから、春はまだ終わっていないでしょう?
毒龍:ふっ、あの俗物どもはただのつきものに過ぎん。
桃だけが、唯一無二の春の花!
なるほど、彼は桃の花しか愛していないんだ。
無剣:あなたも春を惜しむと思ったら、
桃の花が見られなくなったことだけが残念なんですね。
毒龍:春を惜しむ?桃の花が咲かない春なら、秋や冬と変わらない。
さり気なく軽蔑を含んだ毒龍の言葉が、本当で気に食わない。
無剣:「人間四月に芳菲が尽き、山寺の桃花が初めて満開」って詩があるじゃない。
今でも、山中の桃の花がまだ咲いているかもしれないよ。
これを聞いて、毒龍は少し認めた表情を見せてくれた。
毒龍:ほう、少し勉強したようだね。
ならば、近くの山に行ってみよう。
こうして私たちは「ついでに」隣の山にまで行った。
探した甲斐があって、ようやく峰の間に綺麗な赤が見えて、目を奪われた。
毒龍:妖しく美しく咲く、これこそが花のあるべき姿だ。
毒龍:ん?は!
突然眉を顰めた毒龍は、急速に桃の木に向かっていく。
木の上で花を摘んでいる人が見えて、私も急いで向かった。
毒龍:君たち、なぜ花を摘んでいるんだ?
花を摘むもの:食べるに決まってるじゃん。
毒龍:食べるだと?桃の花がおいしいと言うのか?
花を摘むもの:そりゃそうだ、この桃は果実が出来てもまずいから。
その花で桃花粥や桃花餅、桃花大福を作ったほうが美味いんだ。
彼らは花を取りながら料理のことを熱弁した。
殺気立っていた毒龍は全く眼中に入っていない。
私は慌てて毒龍とその人たちの間に立ち塞がった。
毒龍:ちょ、ちょっと毒龍、ここは抑えて……
毒龍:抑えるだと?簡単に言うな。
この世に最も綺麗な色は、桃の赤と、血の赤だけだ。
毒龍:ひとつを台無しにしたら、もうひとつで償わせてもらうことにしよう。
無剣:じゃあ、私が償ってあげる!
ちょっと後悔したが、
毒龍の殺気は少々消えていた。
毒龍:ふふふ。無剣、自分の言ったことに 責任を取ってもらうよ。
今思い出しても、どこかで痛むような……
灼灼たり其の華
連戦し続き、動きの悪いものから狙う魍魎たちは一斉に私に襲いかかる。
仲間たちが駆けつけていなかったら、私はもう天に召されていただろう。
ある時、毒龍は何故かわざと一匹の魍魎を生け捕りにしてきた。
毒龍:この頭蓋骨、あまり美しくないな。まことに残念。
この言葉を聞いたあの魍魎の気持ちを、私は想像できない……
毒龍:ふふ、なんて汚い爪だ。不潔な子にはお仕置きだ。今日は晩ご飯抜きだぞ。
魍魎:ゴゴゴゴゴゴオォォ!
鞭を三発振り下ろし、魍魎が悲鳴をあげる。
毒龍:いけません、夜遅く大声を出したら、近所迷惑になる。そういう悪い子にもお仕置きだぞ。
明日の朝ごはんも抜きだ。
魍魎:ゴゴゴゴゴゴオォォ!
鞭をまた三発振り下ろし、魍魎が更なる悲鳴をあげる。
毒龍:口答えする気か?明日の昼ご飯も抜きだ。
ようやく食事を与えられた頃には、魍魎の目には既に感激が浮かんでいた。
次の日から、毒龍は魍魎に鎖をかけて連れ回し、人々の注目を集めた。
恐れもせずに近づいてくる人々を見た魍魎は、ただ吠え続けた。
魍魎:ゴゴゴゴゴゴオォォ!
もちろん、お馴染みのムチを持ちながら。
毒龍:失礼な子は悪い子だ、今日の晩ご飯も食べさせないよ。
魍魎:ゴウウ~
気のせいかもしれない、魍魎の叫び声に残念な気持ちがあるような。
何日もそれを繰り返し、魍魎は何日も食物を抜かれた。
そして、おそらく心も。
そして魍魎に対する呼び方が「悪い子」で定着した。
無剣:悪い子、最近は大人しいな、毎日ご飯を食べられる。
魍魎:ゴオ!
また気のせいかもしれない、
魍魎の叫び声がまるで褒められた子供のように感じる。
毒龍:悪い子、こっちにおいで。
魍魎:ゴオオ。
この見慣れた光景って、もしかして?
毒龍:ずいぶんと礼儀をわきまえるようになったね。私の教育方法が正しいからかな。
毒龍:次は、今までやったことの中で一番いけないものを言ってごらん。
魍魎:ウウ~
久しぶりにムチを振る音が聞こえた。
毒龍:君がした一番いけないこと、それは~
魍魎:??
無剣:それは?
私も思いつくことがない。
毒龍はいきなり私を指しながら魍魎に言った
毒龍:この人を攻撃する事、それが一番いけないことだ。
毒龍:覚えたか?悪い子?
魍魎:ゴオ。
その後、毒龍はそれに対して、また悪い子にお仕置きを行っていた。
見ていられなかった……
終わったあと、しっかりお仕置きを受けた悪い子が解放された。
毒龍のやり方が功を奏したのだろう。
あの後、私は魍魎に攻撃されることが一度もなかった。
嫁入り
毒龍:こっちに来て、無剣、
髪を整えてあげる。
以前にあった、彼が「髪を整える」という様子を思い出して、私は反射的に拒絶した。
無剣:大丈夫、自分でやるから。
毒龍:ほう、私の腕を疑ってるのか?
目を細めた彼を見て、
思わず寒気がした、これ以上拒否したら、恐らく……
無剣:いえ、あなたの手を煩わせたくないだけです。
毒龍:ぐずぐずするな、私の興が冷めたらどうする。
無剣:はい……
私は慌てて走り出し、彼の前に立った。
私の濡れた髪は素早く整えられ、髪型まで新しくなった。
無剣:とても綺麗だ!
無剣:わぁ、こ、こ、これって。
無剣:なに、嬉し過ぎて言葉も出ないのか?
毒龍:牛家村の東に住む劉さんはね、髪結いの腕が天下一品だった。
それは私が教えたものなんだよ。
無剣:この前に通ったあの牛家村のこと?あそこは廃村のはずでは?
毒龍:私が皆殺しにしたからね。
思わず鳥肌が立った……
無剣:えっと、み、み、み。
毒龍:なんだ、皆殺しの原因を聞きたいんだろう?
私は黙って頷いた。
毒龍:無剣よ、気持ちは分かるけど。
あまり知ってると悩みの種になるだけだ。
突然真剣な口調になった毒龍。でもす ぐにいつもの彼に戻った。
毒龍:あの村の住民はね、みんな強盗だったんだ。
毒龍:いつも通りすがりの行商人や隣村の財物を奪っていた。
無剣:だからあなたは天に代わって敵を討ったの?
毒龍:まさか、そんな暇じゃないさ
毒龍は私に冷ややかな視線を投げ、話を続けた。
毒龍:最初は、劉さんの腕を見込んで、私の髪を結う資格があると思っただけだ。
毒龍:奴らの仕業など、私になんの関係もない。
無剣:じゃあ、なんで手を出したりしたの?
毒龍:黙れ!口を挟むな!
話の腰を折られて機嫌を損ねたみたいで、私は慌てて口を閉じた。
無剣:……
毒龍:彼らが間違っていたのは、私まで狙ってきたことだ。
毒龍:ふ、身の程を弁えぬヤツは万死に値する。
毒龍:しかし、ちゃんと成仏はできたと思う。
毒龍:私がそれぞれ一番似合う髪型にしてあげたんだからね。
鏡の中の毒龍を見てる途端、彼は突然、私の首元に手を伸ばしてきた。
毒龍:無剣、暑かった?汗ビッショリだよ。
そんな話を聞かされれば当たり前だ!と心が叫びたがっている。
……
あれ以来
彼の機嫌が良い時に
新たな髪形に変えてくれる
当然のように、全部綺麗に仕上げてくれた。
桃花に勝るもの
そしてそこには、世界一美しい桃の花がある。
ついに、私たちは伝説の桃花島に辿り着いた。
毒龍:無剣、一刻も離れるなよ。
この桃の花は一見無害だが、迂闊に出られなくなるよ。
無剣:出られなくなったらどうするの?
毒龍:まぁ、その時は、花の肥やしになるな。そうなったら来年の花はもっと綺麗になるね。
毒龍は言いながら、目を細めて、まるで満天の桃の花を眺めてるように。
花は好きだが、花になるのは勘弁だ。
無剣:わかった、私があなたから離れなければいいでしょう。
毒龍:この桃林の中に奇門遁甲の術が組み込まれている、
一歩でも間違ったらもう戻れないと思え。
毒龍の独特な足取りは、まるで踊っているような感じがする。
毒龍が歩くスピードを下げてくれたのか、
初めて桃花島を訪れた私でも、なんとかついていけている。
苦労した末に、ようやく巨大な桃の木の下に辿り着いた。
花びらが微風と共に舞い上がり、私は思わず桃の木に近付いた。
毒龍:無剣、足元に肥料になったヤツがいるな。術中に二十二日間迷い続けた末に餓死したようだな。
無剣:彼らはどうしてここに来たのでしょうか?
毒龍:他人のものに手を出したかったんだろうな。
欲深いヤツは大勢いるってことだ。
毒龍:ちなみに、いま君の足元にいるのは、十日間迷ったあげく、自害した肥料だな。
無剣:島の人間たちは、救ってあげなかったってこと?
毒龍:欲張りで、身の程知らずなやつなんざ、死んでも当たり前じゃないか。助ける必要はどこにある?
いま足元に……
彼の話が終わらないうちに、私は位置を変えた。
毒龍の表情を伺いつつ、私は無言で何度も何度も位置を変え続けた。
結局、毒龍の隣に戻ってきた。
無剣:どうしてここには、えっと、こんなにたくさんの「肥料」がいるの?
毒龍:見てみろ、この桃の花は、他の花より美しいだろ?
毒龍:人間とは、常に美しいものに惑わされるもの、そして、いつしか死に至ってしまう。
無剣:じゃあ、なんでこの木の花はこんなに妖艶なの?
毒龍:言うまでもないだろ、ふふ。
無剣:まさか、肥料が?
改めてこの巨大な桃の木を眺めると、一瞬、その花の色が血の赤に見える。思わず体が震えた。
毒龍:ふふ、びっくりしただろ。
毒龍:嘘だ。
桃花島の桃の花にそんな下品な肥料を使うわけないだろ?
毒龍:ここは陣の中心、霊気に溢れ、花も勿論別格だ。
無剣:ですよね、こんなに素敵な場所に、そんな恐ろしいことがあるだなんて考えたくない。
私は一歩進んで、満天に飛び舞う花を堪能する。
毒龍:私が最も好きな二種類の桃の花、覚えているか?
無剣:うん、木に咲く赤、そして地に塗った赤。
毒龍:でもあれはまだ世の中で一番美しい花じゃない。
無剣:え?
一番美しいもの?地に塗った赤を考えると、思わず鳥肌が立った。
もっと恐ろしいことが起こるのではないか?
毒龍の表情が読めない。その視線はまるで私を見透かし、背後に舞う花びらの嵐を見つめているみたい。
毒龍:枝に咲き満ちる桃の花も……
毒龍:彼女の~
毒龍:花のような笑顔に及ばず~
同盟会話
○○の毒龍:武の修行は進まぬ一方ですが、他人の技を真似するつもりはありません。
○○の毒龍:達人の忠告を受け入れることにも些か抵抗があるくらいですよ。
○○の毒龍:何といっても、師匠はいつまでも師匠ですからね……
◯◯の毒龍:はあ、まさか
◯◯の毒龍:これほどの罪を犯した私が、よもや師の門下として戻れるとは。
◯◯の毒龍:師匠。師匠…
◯◯の毒龍:師匠は文武両道で、笛吹きも書道も絵画も達者な方です。
◯◯の毒龍:青蓮と工部の行方を聞き出しました。彼らと真筆を交換してくるつもりです。
◯◯の毒龍:師匠に喜んで頂けるとよいのですが……
判詞
二句目 妖艶な手がそれを壊していた
三句目 仇討つために魍魎も捕らえて
四句目 髪を束ねて優しさを演じていた
五句目 月の下で踊ると臙脂の如く赤く染まり
六句目 攻める気迫が鋭く、眉が柳葉の如し
七句目 もっとも好きな桃の花のように
八句目 綺麗に咲くあの人の笑顔だ
コメント(1)
コメント
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・武の修行は進まぬ一方ですが、他人の技を真似するつもりはありません。
達人の忠告を受け入れることにも些か抵抗があるくらいですよ。
何といっても、師匠はいつまでも師匠ですからね……0
削除すると元に戻すことは出来ません。
よろしいですか?
今後表示しない