魍魎 仲合
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魍魎 仲合
裂岩
壮士遺志
無剣:魍魎が暴虐を行うのを天誅と言えるか!
裂岩:……ち、違う……俺らは元々龍西の山間地帯にいる…緑林の好漢だ。
無剣:緑林の好漢……それは強盗の言い逃れだろう。
裂岩:否定はしない……普段は……官道を襲撃し、倉庫の銀を盗んだ……
けど……俺らは盗んだ金で……貧民を救済した……
体は死んでも……信念は……続いている……
裂岩:俺たちは……崩山さんに……従って……妖、妖……を、破壊する……
無剣:それは魂魄を吸収する妖鏡か?
裂岩:そう…………
ゴホ……ゴオオ……
どうか……お、俺たちを……た、助けて…破壊……
彼はまだ何かを言いたげだった。
けれどそれを望んでいた眼差しは一瞬で消え、息を引き取り、私の腕を握る手も力尽きた……
無剣:安らかに眠りなさい……私たちがきっと引魂鏡を破壊するから……
泥泥不染
無剣:どういう意味……
紅綾:あなたは私を捕虜にしたけど、当然あらゆる方法で私を拷問するつもりなんでしょう?違う?
無剣:あの、あなたは勘違いしてるかも……拷問しに来たわけじゃないよ。
紅綾:うっわ、偽りの優しさをそこまで演じ切るなんて、紅綾はそんなの初めて見たかなあ。
無剣:私は知りたいだけよ。その妖鏡が魂魄を吸収し、無辜の人を世に災害をもたらす魍魎になることを知っていて、
なぜあなたは妖鏡に手を貸すの……
紅綾:この世の人は罰を受けて当然だ。
紅綾:私は、あいつら一人一人が苦しく叫ぶ様子を見るのが好き。
こうすることで、私みたいな「魂が残っている魍魎」は満足感を得られるんだよ。
無剣:なんでそんな事を言うの?
紅綾:紅綾のお父様とお母様は「魍魎」だ。両親は何も知らない紅綾を罪人たちに渡した。
あの時、私は二人の涙を信じて、いつか私を連れ戻してくれると思ってた……
肉親でさえ紅綾にこんなことをしたっていうのに、他人に何ができるっていうの?
無剣:紅綾……悲惨な過去は確かにこの世界を憎む理由になるかもしれない。でもあなたが無辜の人を傷つけていい口実にはならない。
このままだと、あなたはもっと多くの「紅綾」を作り、新たな「罪人」になってしまうよ。
紅綾:それがどうした!
紅綾が味わった苦しみと苦痛……
なんで、私だけがこんな……ううう……
紅綾はひたすら泣き続け、最後には気を失った……
夢の中で、彼女は聞き覚えのない二人の名繰り返し呼んでいた。きっと彼女が愛し、そして憎んでいる父親と母親だ……
もしかすると、彼らにしか紅綾を救えないのかもしれない。
裝腔作勢
無剣:……あなたはなぜ魍魎を助けるのか?
擲乾坤:俺は本気で魍魎を助けようとしているのではない。あくまで元宝が欲しいだけだ。
無剣:誰が欲しているの?
擲乾坤:言えない。これはこの業界の規則だ。ご了承願う。
無剣:もし私があなたにもっとたくさんの元宝をあげたら、その人の名前を教えてくれる?
擲乾坤:無理だ。泥棒にも泥棒なりの筋っていうものがある。
無剣:(彼は真剣な顔をしている、きっと嘘はついてない。)
(でも緑はかつて私にこの人の話をしてくれた。彼は口から出まかせばかりの詐欺師だって……)
うんうん、それなら、あなたはもう用済みかな。
擲乾坤:閣下は捕虜を虐殺して、後世に悪名をはせることになろうと平気なのか?!
彼の怒りに燃える罵声を無視し、内力を放つような態勢を見せた。
擲乾坤:ちょっ!ちょっと待て!話すから!
ある人に珍宝を探すよう頼まれただけで、他のことは一切知らないんだ。
無剣:その人の名前は?
擲乾坤:俺は本当に知らない!
毎回の取引は違うやつが代行しているんだ。
無剣:今日だけは見逃してあげる。
擲乾坤:まっ、待ってくれ!許してくれ!
傾慕之心
無剣:敵営にいるのに落ち着いている。さぞや女性の中でも豪傑なんだろうね。
匂魂蠍:豪傑?わらわも豪傑な女になりたいものだわあ。
無剣:……
匂魂蠍:ふふ、照れるでない。
わらわは貴方を気に入った。
無剣:なんで?
匂魂蠍:だって……ふふ……強い者にしかわらわを征服できないもの
無剣:わたしは強い者とかではなく、武術も仲間たちには及ばないよ。
匂魂蠍:ふふ、多分貴方はまだ実力を発揮する方法を見つけていないだけ。
何といっても、貴方はわらわが見た中で一番強い人だわあ。わらわが忠誠を尽くすあの方よりも、ね。
無剣:(実力を発揮する方法)……
あなたが忠誠を尽くす方って……魍魎の厄災の元凶?
匂魂蠍:うん。
無剣:ってことは、あなたは妖鏡のせいで魍魎に化けた人を見たはず!それなのになぜその人を助ける!
匂魂蠍:その話をするなら、もうつまらないわ。
わらわは彼の強さが好き。、何をするかなんて、わらわには興味ないの。
だから、わらわから情報を貰うことに気を回さないで、どうやったら強くなれるかを考えてほしいわあ
匂魂蠍:そうしたら、教えるかもしれない。せ~んぶね。
無剣:……
悠遠之夢
無剣:ごめん……元の姿に戻せなくて……
雲珀:吾は……人の世を……乱さずに……済んで……十分に幸いだ……
そして時機もまだ……来ていない……
無剣:時機?
雲珀:吾は……崑崙氷河の……霊物から……生まれしもの……空に憧れる故……修行に専念した。
だが……急に異変が……起き……妖鏡に……抗えず……
無剣:(あの引魂鏡が霊物を魍魎に変えるとは思わなかった……)
(一体……何者の仕業だ?)
雲珀:……ああ……氷河……吾と共に……空を……これで……十分だ……
どうか……この……聖山を……救い……この……世界を……救……
無剣:どうか安らかにお眠り下さい……私たちが崑崙を浄化し、五剣の境を救います……
城破人亡
震天:君……ぼんやりするな……あそこの壁を……もっと……高くしろ。
俺たちは……城壁を……守らねば……
無剣:前に何があった?
震天:突然現れた……魍……魎が……大挙して侵入してきた……
俺は……石匠だ……不眠不休で……彼らと共に……石の城壁を……建造した……
震天:でも……巨大な……魍魎を……食い止め……られなかった
無剣:……(もしや魍魎王?)
震天:俺は……丈夫な……壁を……建造できなかった……罪がある。
震天:城がある……からこそ……人は生きられる……城が破壊されたら……人は死ぬ。
……もう一度やり直しせば……俺なら……きっと……できる……すまない……ゴホゴホ
無剣:謝らなくてもいいい。あなたはもうやりきった……
あなたたちが建造した城壁は、たくさんの人を救った。
震天:はぁ……そうか……よ、よかった……よかっ……
無剣:私を信じて、魍魎の厄災は二度と起きないから。
ここで安心してお眠りください。みんなの英雄。
孤影不再
無剣:ねえ。しっかりして!
断影の手に会った両刀を地面に刺すと、彼は呆然と私の知らない過去を見つめながら“ドスン”と地面に膝をついた。
伴ってきたのは、胸が張り裂けるような悲鳴であった……
断影:俺、俺が……俺が奴らを殺した。
俺が彼らを殺したんだ!あああああああ……
無剣:奴ら?
断影:本当は……彼らに知らせて……魍魎の災禍を避けようと……
まさか……知らせる途中で倒れて……一日で千里を行く傾向があるとしても……どうしようもない……
断影:村の人を……あの変な……から……守れず……
生ける屍になって……この手で……俺が……彼らを殺した……
断影:もし……鏡を……探らなければ……
家に……戻らなければ……彼らは……冥土で……どんな顔をしたら……
……ゴホゴホ……ゴフ……
無剣:妖鏡のことはあなたの力でどうにかなるようなことじゃなかった……
自分を責めないで。あなたはもう最大の努力を尽くして彼らを守ろうとした。
たぶん、彼らはあなたを責めないと思う。あなたがいなかったら、恐らく誰も生還できなかった……
断影:……本当……か……
無剣:うん、聞いてみたらわかるよ。
もし来世があれば、守りたかった人たちと再会できるといいね。
安らかにお眠り。
断影:……
魂断鉄鎖
冷たい顔には急に苦痛の表情が浮かび、残された最後の記憶が消えていくようだ。
縛星錠:……俺は……戦闘……できない……
……目標を……殺さないと……
縛星錠:闇……闇しかない……
無剣:ねぇ……
縛星錠:切れた鎖……ふっ……この自慢の暗器……
傷だらけ……なのに……なぜ……抵抗……できない……
ああああ、違う……俺は……鏡、存在ずべきではない……妖物
無剣:また引魂鏡か……
縛星錠:ゴホゴホ……うあああ……死……暗殺者……
最高の結末……おい!気をつけろ……あれは……
ゴゴゴゴオォォ……ゴゴオォ……
無剣:忠告してくれてありがとう。その鏡に気を付けるよ。
あなたの過去がどんなものであったとしても……死ぬことは終わりでもあり、始まりでもある。
どうかここで安らかにお眠りください。
縛星錠:……
工部没案
彼の死は人口に膾炙するものではなく、官位を高め、権勢を誇り富貴を極めるものでもない。
だが私は知っている、その筆には努力と心血が注がれていた。
私は彼の傍で、一つの字の為に精力を尽くし、詩を作ることに全てを捧げるその姿を静かに見届けた…
工部、彼の死は彼そのものだ、胸に天下を抱き、国を憂いて民を憂う。
彼には見捨てられた廃案でさえ、字が骨につき、分に心をくむ。
一筆一画して、紙の背面を通す。
彼が天下に抱いた希望、遺憾、憎悪、神吉、そのすべてが、私と共にある。
墨骨・工部:だが主人よ……我々の気持ちを理解しようとしたことがあるか?……あなたに見捨てられた没案たちの……
我らも世間の目を覚ます声となって、天下に轟きたいのだ!
しかし私たちを待っているのは、灰となり土に埋まる運命しかない……
墨骨・工部:主人よ、あなたがこの世間に抱く悔しさの量は、私たちが貴方に抱く悔しさの量に等しい。
千言万語、ただ、あなたにもう一度見てもらい、拾ってもらい、生まれ変わりたいだけ……
銀装素裏
雪鹿は木の下で静かに佇み、遠くで霞む雲と霧を凝視していた。
雪鹿:雪……雪……
雪鹿:雪ってなんだろう……
カイドウ:たぶん……とってもきれいなのかな……
雪鹿:雪……見たい……
カイドウは困ったように頭を下げ、小さなため息を漏らした。
カイドウ:雪樹巻堤紗、怒涛巻霜雪、天塹無涯
カイドウ:主人はこういいました。逆巻く波はまるで雪のようだと……
雪鹿:波……見たことある……
雪鹿:雪は……波。
雪鹿は目を細め、口元に笑みを浮かた。まるですぐ目の前で波が押し寄せてきてるよう……
雪鹿:雪って……美しい。
天灯漫天
今宵酒から覚めるのは何処か 楊柳の岸にて 風と月を迎え 幾年経ちも 良辰好景も虚ろなり
千種風情 何人に話すか
三絶が誌を読み終え、カイドウは提灯にその文字を丁寧に書いていく。
蝋燭の光が輝く中、墨を纏った提灯が宙に浮いてゆき、遥かな空へと旅立っていく……
カイドウ:ご主人様……あなたの誌は、誰のために読むのでしょうか。
カイドウ:なぜ詩には悲しみばかりで、喜びがないのですか……
カイドウは顔料ででいている花びらを撫でながら、思いにふける。
カイドウ:絵の世界の外では、どんな風景があるのだろうか……
静寂の中、彼女のため息は風にかき消された……
カイドウ:ご主人様、あなたの詠んだ詩の中で、私のために詠んだ詩はあるのですか?
彼女は最後の提灯を手放し、遠くへ飛んでゆくのを見送る。
夜の風が吹くとともに、揺らめく光が夜空に煌いた。まるで彼女に答えているかのように……
不死血蓮
言え、何が欲しい?
無剣:なぜ彼を助ける?
赤血蓮:俺が?彼を助ける?俺たちはお互いを利用するだけだ。
無剣:わたしたち?あなたは一人じゃないの?
赤血蓮:俺は俺で、俺たちだ。
無剣:一体どういう意味?
赤血蓮:赤血の紅蓮は、血を浴びて生き返る。血蓮は咲き、明王は生き返る。
無剣:あなたはいったい何をしているの?
赤血蓮は急に倒れると、血の花となって散っていった。まるで存在などしていなかったように。
いくつか周りに赤血蓮に似ている影を見るも、一瞬で四方へと去っていった。
無剣:赤血蓮がこんなに存在して……?彼は一体何者なんだ?
夢の護衛
けれど、彼女の眼中にはまだ激しい炎が燃えていた。
陰の夢魘:お前に負けた以上、お前の勝手にするがいい。
だが、いつの日か、我が一族は復讐してやる。
無剣:なぜ……そんなにも私たちが憎いの?
陰の夢魘:……
無剣:夢妖は少し話してくれたけれど、あなたの口から説明してはもらえないかな。
陰の夢魘:あれほど警告したというのに、お前たちの甘言に敵わなかったとはな。
無剣:では、やはり私たちと関わっているのね?
陰の夢魘:無論だ。
それぐらい教えてやっても構わない。なにせ血を帯びた深い仇を隠す必要などないのだからな。
無剣:なに?!どういうことか言って……
陰の夢魘:お前と話すのはこれで終わりだ。
さっさとやれ!
無剣:(夢魘が言っていた仇とは一体?)
陰の夢魘:何を待ってる?冷血な殺し屋よ。
無剣:私……殺す気はないよ。
もしあなたの言った通りなら、きっと何か誤解があると思う。
だって……会った事もないのに、なぜ仇があるというの?
無剣:今あなたを殺すのは簡単なことだけど、演技する必要はないよ。
陰の夢魘:ふん、信じられないな。
無剣:じゃあ……話す気になった時にでも、過去の事を教えてね。
陰の夢魘:その日が訪れることは永遠にないさ。
夢境の刺客
数手を交わした後、彼女は私の剣気により倒れていた。
無剣:なぜ私たちを襲うの?
陰の夢妖:……
無剣:勝負はもうついた、抵抗はやめて。
陰の夢妖:ふん!殺すか斬るか、さっさとやれ。
無剣:中原語が喋れるの?!
陰の夢妖:しまった!
お前、私の口から……
陰の夢妖:ふん!
無剣:……本当に悪意はないんだ、偶然ここに来て……
陰の夢妖:人間は、我が一族の信用に値しない。
無剣:ねぇ……
その後、彼女は一切口を開けなかった。何か秘密を守り通すつもりのようだ。
私はまだ夢妖の来歴を知らないが、彼女が言っていた一族がかつて私たちと関わっていたのかもしれない……
妖鎖魂獄
無剣:(先の一撃は彼の体を貫通した。そう長くは耐えられないだろう。)
魍魎王:お、俺……は……
魍魎王:殺せ……殺せぇぇぇぇぇ!
魍魎王:助けて!助けてくれ!俺は死にたく……ない……
無剣:どういうこと?!今……三つの違う声が?!
魍魎王:厄災を……阻止……阻止……俺……鏡、鏡を……壊……す……
無剣:新たな声……
(魍魎王に……たくさんの魂魄が……妖鏡によって体内へと吸収された…)
(くっ……この形骸の中にどれだけの魂魄が囚われてしまったんだ?!)
魍魎王:ゴゴゴゴオォォ……ゴゴオォォ……
魍魎王:す……すまない……
魍魎王は最後に甲高い叫び声をあげ、ぱたりと倒れた……
妖藤之心
蝕霊藤:っぐ……
無剣:あなたは?
蝕霊藤:こ……ここは……どこだ?
無剣:桃花島だよ。
蝕霊藤:桃花……島?そうか、もう……桃花島に着いたのか……
蝕霊藤はそう言いながら倒れた。満足げな笑顔が浮かんでいる。ようやく、願いを叶えたようだった。
蝕霊藤:やっと……帰ってきた……ここで死ねれば、もう十分だ……
無剣:待って……
蝕霊藤が意識を失うと、体は全て緑色の藤蔓となって散った。その藤蔓はまるで、元々桃花島に住んでいた植物だったかのように、静かに森へと溶けていった。
無剣:またいつか、会えるといいね……
罪人之罪
無剣:目が覚めた?
朱炎鬼:俺……俺……俺は……何をした?
無剣:どうしたの?
朱炎鬼は頭を抱えて恐ろしい形相をし、
すぐにでも爆発しそうだったため、私たちは彼を警戒しつつ見ていた。
次の瞬間、朱炎鬼は血を吐き始めた。
朱炎鬼:俺はまた犯した……犯した……
無剣:貴方はまず……
朱炎鬼はあなたを制止した。自分の命はもう長くないと悟ったのだ。
正気を取り戻したところで、ただ返事をすることしかできない。
朱炎鬼:俺は……元々……罪人で、ようやく……俺は……師匠に出会って……罪を贖うべく連れられ……なのに、俺は……師匠を……
朱炎鬼:師匠を……俺は……罪だ……罪だ……
朱炎鬼は罪だ、罪だと呟いた。
それはまるで呪文のようで、声はだんだん小さくなっていった。
無剣:いいえ、あなたに罪などない。罪がある者がいるとすれば、それはあなたを魍魎にさせた人だ。
悔之晩矣
無剣:あなたは?
奪魂鬼は一口で大量の血を地面に吐き、体中にある傷口を信じられないように見ている。
奪魂鬼:そんなバカな……鬼界で、俺、俺は、不死、不滅なはすじゃないのか?
無剣:鬼界がどこなのかはしらないけど、ここは五剣の境だよ。
奪魂鬼:なに……?
奪魂鬼は目を大きく開けや。生気が彼の体から急速に消えていく。
奪魂鬼:ば……かな……
話が終わると、彼は目を開けたまま、真っ直ぐに地面に倒れて息が消えた。私は彼の目を閉じると、簡単な儀式で彼を埋葬した。
無剣:このような災難がまた起こらないよう、必ずや止めてみせる……
兵解の道
女冠:閣下の武芸……敬意に値する……
無剣:道長、まだ何か言いたいことはある?
女冠:全身の弟子なのに……同門を殺す……無実の人を傷付けた……
教の律では……死罪だ……死罪だ……
無剣:それはあなたの本意ではない、引魂鏡のせいです……
女冠:だが剣を振ったのは……私だ……私なのだ!
もしも、もしも私にもっと力があれば……妖鏡の力は抑えられたのかも……
もし私が悟っていたら
私は師門の名を傷つけた……同門に会う顔がない……
今は……もはや……登仙も求めない……ただ……罪を償いたい……
無剣:……
女冠は私の前で剣を振って自害した。ぼろぼろになったその体は、全真の弟子の遺体とともに横たえた。
例え魍魎になり果てた彼女でも、その首筋から流れる血は人間と変わりはしない。
心中の道
だが黄冠は足を止めることなく、私に向かって来た。
無剣:道長、ごめん!
私が技を繰り出そうとした瞬間、黄冠が急に口を開いた。
私は彼を傷つけないよう、すぐに力を抑えた。
黄冠:……全真……我らの聖地……
無剣:まさ残された思いか……、ごめん、あなたを元通りには戻せない。
黄冠:全真に……近づけ……ない……あああ……
黄冠:酒や色ごと……諂いや愛念……憂愁や思慮を切るべし……
無剣:……(いま道長が口にしているのは恐らく重陽宮の教え。)
(体はもう腐っているのに、まだ全真の事を考えているなんて……)
道長、今ご登仙を手伝わせていただきます。
黄冠:感謝する……
憂愁を忘れれば欲界を超える、欲望を清めれば色界を超える、
空想を捨てれば無色界を超える……
青蓮没案
彼の一筆一墨が、私を唐紙から生み出したのだ。
人々はこういう、彼が書き出せば、天下を驚かす、字句の珠玉、絶筆の生花。
彼の筆触が私に魂を与え、彼の思いが私に精神を授け、それが紙上に飛びあげられた時、心の中には希望と憧れが満ちていた。
青蓮の詩として、人々に吟詠され、代々渡り伝わること、実に幸せだ。
だが、包み、捏ねかえす、捨てられる…私の運命はそれだけだった。
体にしわが溢れて、魂に傷が満ちて、うす汚い泥沼の中に陥て……
心からの喜びが悔しさへと化し、満腔の熱意は凶悪に落ち、無数の原案が集まり、数えきれない怨気が付き纏う…
潑墨・青蓮:主よ、私たちを…もう一度拾ってみてはいただけませんか、
もう一度…あなたが書いたこの詩を…
妖と化しても、その姿は彼のままだった。
一生をかけて、ただ認められたかっただけだ。もしこの願いが成就できないのなら…
潑墨・青蓮:主よ、ならば…一生私たちを傍においてくれますか?
水霧朦朧
幻影水兵:大きな波が……空に届かんばかり……
幻影水兵:私の……私の家族が……波に巻き込まれた……
幻影水兵:水平でありながら、彼らを助ける力がない……
幻影水兵:水門……軍師の命令に……逆らえず……
幻影水兵:私は……自分の手で……彼らを……葬った……
顔は無表情だが、言葉から悔しげな心情がひどく伝わってきた。
剣気が彼の姿を突破したーー
幻影水兵:彼らは……私を……許してくれるだろうか?
彼はだんだん水煙となっていき、空へ消えていった。
心魔の言葉
浮世は何のごとくか……夢に似た夢のごとく。
幽谷心魔:人々の夢は、ときに優しく美しい。時に痛ましく侘しい。
わたくしいは……
幽谷心魔:夢の中で見る、親の溺愛の視線、隣人の賞賛の言葉、他人の羨望の眼差し。
幽谷心魔:夢の中で見る、箜篌を独奏する孤独、故郷を離れる未練、困難に陥る絶望。
幽谷心魔:夢の中で見る、満身創痍の痛み、肝に銘じる憎しみ、泣き寝入りする悔しさ。
幽谷心魔:夢の中で見る、灼眼の火、身に染みる痛み、至るところで流れる……眩しい深紅……
幽谷心魔:それは夢であって、夢にあらず。
わたくしの手が、血まみれになった。
幽谷心魔彼らは私の目の前で次々と倒れていった。親、家族、隣人、将兵……
幽谷心魔:その時、わたくしはわたくしではなく、魔であった。
幽林霊物
提灯の光が白い霧を貫き、主人と会えるように招待してくれている。
密林の奥、絹糸のような月の光が林の間からこぼれ、美しい衣装を纏った女の子がやってくる。
蓮芯:蓮芯より恩人にご招待をさせてください。
無剣:恩人?
蓮芯:恩人のご明察がなければ、私は既に刀剣の下に死んでしまっていたでしょう。
無剣:いえ……恩人なんてとんでもない。
この前は私たちがやりすぎてしまいました。どうか許して欲しいです。
蓮芯:ふふ、お名前を伺ってもよろしいですか?
無剣:無剣。
蓮芯:覚えておきます。
無剣:蓮芯さん、私たちが密林のことを他の人に伝えれば、今後、彼らがあなたを傷つけることもないでしょう。
蓮芯:そこまでする必要はありません。もし彼らが森には魔物がうろついていると思っているなら、逆に彼らの身の安全を守れます。
無剣:でも――
蓮芯:恩人のご厚意に感謝します。
ですが、私はもし悪名を背負ったとしても、誰かが子を失うようなところを見たくありません。
言い終わった後、蓮芯は切ない笑顔を見せ、清らかな月の光と共に消えた。
無剣:ああ……あなた達が安らかに眠れますように。
名実相伴わず
再び私と相まみえた斬風は全身が震わせ、とっさに私に向かって土下座した。
無剣:(それは恐れによるもの?)
(そうだ、彼は確かに恐れている、彼にとって命よりも大事なことに。)
無剣:頭を上げてください。
斬風:お願いします!私を弟子にしてください!
無剣:なんで?
斬風:貴方の武術を学べれば私も強者になれます!
無剣:そうか……
期待の視線を向ける斬風を見下ろして、私は何も言わなかった。
答えを察していたのか、斬風は何度もひざまずいて頭を地につけた。
額に血が滲んでもやめようとしない、まるで敬虔な信者のようだ。
けど私は神じゃない、彼の求める神にはなれない。
やむを得ず
剣気は槍を両断し、彼女自身も衝撃に吹き飛ばされた。
長纓:そ、そんな……
無剣:どうしてこんなことを?
長纓:フン、これは私自身の問題、教える義理はない。
無剣:あなたはいつも手加減をしているわね。戦いの中にも迷いが見える。
あなたはこんなことを望んでいないはず、そうしてここへ来たの?
長纓:お前……私のことを心配しているとでも?
無剣:あなたを無駄死にさせたくないだけよ。話を聞いて、もう退きなさい。
長纓:…それはできない!
無剣:君……
長纓:鏢(金篇に票)局を復興するため……私は諦めたりはしない。
宝物を見つけ出すまでは絶対に帰らない……
無剣:それならば、仕方ないわね。
長纓:なんですって?!
無剣:悪いけど、安全な所で頭を冷やしていて。
鏢局を復興するために何が一番大事なのか、じっくり考えてちょうだい。
心の隅
夢の影:フフ、何故そんなことを言うの。
無剣:あなたには生も死もないのかもしれないけれど、私は親しい人が散っていくのを見たくないの。
夢の影:あなたが仲間を守りたいと思うのなら、そうしなければならないわ。
夢の陰:私という存在はあなたをの成長を邪魔しているのだから。
無剣:いいえ。
私自身の弱さ、剣境の未来への憂い、仲間の死への恐れ……
無剣:こういう過去に経験したことのない感情……それが今は私の力の源になっているわ。
夢の影:そう、昔のあなたとは大違いね。
無剣:昔の記憶……
覚えているのはほんの断片だけ……ほとんどがあいまいになってはっきりと思い出せない…
夢の影:それがあなたの選択だからよ。
無剣:選択……
夢の影:そろそろ時間ね、これでもうお別れみたい。
夢の影:あなたが自分の選択に後悔せず生きていけるように願っているわ。
無剣:ええ、そうするわ。
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